「遺産相続関連の手続きを弁護士に頼みたいけれど、弁護士費用はどのくらいになるんだろう?」
「遺産分割のトラブルでは、誰が費用を支払うの?」
弁護士に依頼するとなるとなにやら大ごとで、高額な費用がかかるイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
遺産相続に関する問題解決を弁護士に依頼すれば、弁護士費用が発生します。弁護士費用の金額は案件の内容や経済的利益などによって異なり、現在は法律で定められた費用規定がないため、各法律事務所が自由に決定しています。
この記事では、弁護士費用の種類と相場・具体的な遺産相続手続きにかかる費用の目安のほかに、支払いが困難な際の対処法についても解説します。費用に不安があって依頼をためらっている方も、是非参考にしてください。
遺産相続にかかる弁護士費用の種類(内訳)と相場
弁護士費用の種類には、主に次の6つがあります。
- 相談料
- 着手金
- 成功報酬
- 実費
- 日当
- 手数料
このうちで弁護士費用の総額に大きく影響してくるのが「着手金」と「報酬金」です。
かつては「(旧)日本弁護士連合会報酬等基準」によって、弁護士の費用は規定されていましたが、2004(平成16)年4月1日に廃止されて以降は、各法律事務所が自由に弁護士費用を定めるようになりました。
しかし、現在でも(旧)日本弁護士連合会報酬等基準を参考に費用を決定している法律事務所も多いため、相場の基準として、以降の解説にもたびたび登場します。案件別の費用が記載されているので、機会があれば必要な箇所について目を通してみるといいでしょう。
相談料 | 30分5千円程度
遺産相続に関する相談を最初にした際に発生するのが、相談料です。正式に案件を依頼したあとの打ち合わせには、相談料は発生しません。
相談料の相場は、30分〜1時間で5千円〜1万円程度です。
相談料相場 | 30分~1時間 / 5千円~1万円 |
(旧)日本弁護士連合会報酬等基準では、以下のように定められています。
一般法律相談料相場 | 30分ごとに5千円~2万5千円 |
初回相談料が無料の法律事務所や、相談後に案件を正式に依頼すると相談料が無料になる事務所もあります。公式サイトなどで確認してみましょう。
有料相談と無料相談に対応の差があるわけではないので安心してください。
着手金
着手金は、弁護士が正式に依頼を受けた段階で発生します。最終的な結果にかかわらず、原則として返金はされません。
案件の複雑さや依頼人が利益として得られる経済的利益によって金額は変動しますが、下記の旧日本弁護士連合会報酬等基準に基づいて決められていることが多いです。
着手金相場 | 20万円~30万円以上 |
(旧)日本弁護士連合会報酬等基準
相続による経済的利益 | 着手金の額(最低額:10万円) |
300万円以下 | 8% |
300万円を超え3,000万以下 | 5%+9万円 |
3,000万円を超え3億円以下 | 3%+69万円 |
3億円超 | 2%+369万円 |
法律事務所によって、着手金や成功報酬の固定制や、独自の変動システム制を導入している場合もあります。
「着手金無料」には注意を!
依頼内容や、全てのケースにおいて「着手金無料」と設定している法律事務所もあります。
問題なければ、弁護士費用の総額を抑えられる便利な方法ですが、着手金を無料にしている分、報酬金を一般的な金額より高く設定している可能性が高い場合があり、注意が必要です。
弁護士費用は「着手金」と「成功報酬」の合計で計算し、比較するようにしましょう。
成功報酬
成功報酬は依頼内容の成功に応じて発生する費用です。極端な話、依頼人が経済的利益を得られなかった場合、成功報酬はゼロになります。
成功報酬の割合についても、各法律事務所により自由に設定されますが、(旧)日本弁護士連合会報酬等基準が目安となっている場合が多くあります。
(旧)日本弁護士連合会報酬等基準
相続による経済的利益 | 報酬金の額 |
300万円以下 | 16% |
300万円を超え3,000万以下 | 10%+18万円 |
3,000万円を超え3億円以下 | 6%+138万円 |
3億円超 | 4%+738万円 |
成功報酬の固定制を取り入れている法律事務所もありますが、一般的には経済的利益に応じた変動制です。利率や基準についてなど、正式に依頼する前にしっかり確認しましょう。
実費 | 1万~5万円程度
実費とは、弁護士が案件を解決に向けて進める際にかかる実際の費用で、さまざまな費用が該当します。以下は代表的な例です。
- 収入印紙代
- 予納郵券代(調停・審判・裁判などの際、裁判所に納める)
- 戸籍謄本類・住民票の取得費用
- 各種証明書等発行手数料
- 交通費
- 通信料(弁護士と、依頼者や相手方との連絡用郵便切手)
他にも弁護士が裁判などで遠方へ赴き、宿泊を伴う場合には宿泊費も実費として請求されます。このような場合は、実費の金額も相場を上回ります。
実費については案件ごとに幅がでるため、余裕を持って計算しておくといいでしょう。
日当 | 5万円程度
弁護士が裁判や調査などで遠方に出張した際に発生する費用が日当です。
相場としては1日5万円程度ですが、弁護士の出張のなかった案件では、日当も0円になります。また法律事務所によっては、近隣県なら3万円・それ以外なら5万円のように、距離によって金額を設定している場合もあります。
日当相場 | 1日5万円程度 |
(旧)日本弁護士連合会報酬等基準
日当相場 | 半日 | 3万~5万円 |
1日 | 5万円~10万円 |
日当は弁護士が遠方まで出張し、拘束される時間に対する費用です。交通費や宿泊費は実費として計上されます。
手数料 | 数万~数十万円
一般的に手数料とは、当事者間に実質的に争いのない案件で、事務的な手続きに伴って発生する費用です。
遺産相続においては、遺産分割協議書の作成費用・必要書類の収集費用などが該当します。
- 戸籍収集:1万~3万円
- 財産目録の作成:5万~10万円
- 遺産分割協議書の作成:5万~10万円
手数料相場 | 数万~数十万円 |
手数料は、1回程度の単発業務に対して発生する費用のため「着手金と報酬金」のように分けて支払うほどでもなく、案件ごとに固定費用で支払います。
遺産相続の一環として書類作成などの業務を伴う場合は、手数料が着手金に含まれているケースもあるため、初回相談時に支払い形態について確認するのが重要です。
遺産相続にまつわる弁護士費用相場の具体例
この章では、遺産相続における代表的な案件での弁護士費用の相場について、具体例を挙げて解説します。
- 遺言書作成
- 遺言執行
- 相続放棄
- 限定承認
- 遺産分割協議・調停
- 遺留分侵害請求
弁護士費用は経済的利益の額に応じて計算される着手金や報酬金のほかに、個別の手数料が必要になる場合も考慮する必要があります。自分の依頼したい案件にどれくらいの弁護士費用がかかるのかを把握し、初回相談時に明確な見積もりを得ることが重要です。
遺言書作成 | 10万~20万円以上
遺言書の作成にかかる弁護士費用の相場は、一般的には10万~20万円ですが、相続財産の額や内容の複雑さによって変動します。相続財産の種類が多い・相続財産が高額・不動産など評価額の算出が難しいなどの場合は、50万円を超えてくる可能性もあります。
(旧)日本弁護士連合会報酬等基準
遺言書作成の手数料 | 定型 | 10万~20万円 | |
非定型 | 経済的利益が
300万円以下 300万円~3,000万円 3,000万円~3億 3億以上 |
20万円1%+17万円
0.3%+38万円 0.1%+98万円 |
公正証書遺言を作成する場合には、公証役場に支払う手数料として別途費用が必要です。
遺言書作成に関する必要書類の収集も依頼した場合には、書類の発行手数料や通信費などの実費も発生します。
最終的な費用はケースによって異なってくるため、初回相談時の確認を必ずおこないましょう。
遺言執行 | 最低30万円
遺言執行者とは、被相続人が遺した遺言の内容を実現するための役割を担う人であり、遺言執行者を弁護士に依頼する場合には、費用は最低30万円が相場です。
遺言執行には不動産の名義変更や相続登記なども含まれるため、弁護士費用もケースごとに異なりますが、状況によっては100万円を超える場合もあります。
(旧)日本弁護士連合会報酬等基準
遺言執行の手数料 | 経済的利益が
300万円以下 300万円~3,000万円 3,000万円~3億 3億以上 |
30万円2%+24万円
1%+54万円 0.5%+204万円 |
遺言執行では、相続人への遺産分配など遺言内容を実現させるための手続きをおこない、これに関連する手続きの内容や複雑さによって弁護士費用が変動します。
相続放棄 | 3万円~5万円
相続放棄は、相続財産に借金などのマイナスの財産が含まれる場合や相続争いを回避したい場合に有効で、相続放棄の申し立てにかかる弁護士費用は、1人あたり3万円~5万円程度が相場です。
この費用には、相続財産の調査や必要書類の取得・債権者への対応なども含まれます。
相続放棄の手続きは同順位の相続人が同時に行うことができ、複数の相続人でまとめて依頼すると、弁護士費用を減額できる可能性があります。
また相続放棄の場合も、相続人の人数や手続きの複雑さによって最終的な費用は異なるため、弁護士との相談が必要です。
限定承認 | 10万~50万円程度
限定承認とは、相続によって得たプラスの財産の範囲内で、マイナスの財産を引き継ぐ方法です。相続放棄に比べて手続きが非常に複雑なため、弁護士費用も高額になる傾向があります。
一般的な相場が10万~50万円程度と範囲が広いのも、限定承認のケースごとに必要書類や手続きの難易度が異なるためです。
相続放棄と限定承認のどちらを選択するかについては、弁護士費用も考慮しつつの検討が重要です。
遺産分割協議
遺産相続においてトラブルが生じ、相続人間で遺産分割の協議が進まない場合、弁護士に仲裁の交渉を依頼する必要があります。この際の費用は経済的利益によって異なります。
また弁護士の介入によって協議がまとまれば、比較的少額の費用で済む可能性がありますが、合意が成立しない場合には調停の申し立てが必要となります。遺産分割調停となると、書類の準備や手続きなどにより、弁護士費用の高額化は否めません。
遺留分侵害請求
遺留分とは、一定範囲の相続人に保障されている、最低限の遺産の取得割合です。
被相続人の遺言書などにより相続人の遺留分が侵害された場合には、遺留分侵害請求によって、侵害された遺留分を取り戻せます。
遺留分侵害請求の申し立てを弁護士に依頼した場合の弁護士費用(着手金・成功報酬)は、遺産者が得られる経済的利益に応じて異なり、旧日弁連の基準に準拠しているケースが多いです。
経済的利益に応じた弁護士費用の具体例
この章では、遺産分割協議の交渉代理人を弁護士に依頼した際の、経済的利益に応じた具体的な費用を計算してみます。
着手金と成功報酬の参考にするのは、(旧)日本弁護士連合会報酬等基準です。
ここで再掲しておきます。
<着手金目安>
相続による経済的利益 | 着手金の額(最低額:10万円) |
300万円以下 | 8% |
300万円を超え3,000万以下 | 5%+9万円 |
3,000万円を超え3億円以下 | 3%+69万円 |
3億円超 | 2%+369万円 |
<成功報酬目安>
相続による経済的利益 | 報酬金の額 |
300万円以下 | 16% |
300万円を超え3,000万以下 | 10%+18万円 |
3,000万円を超え3億円以下 | 6%+138万円 |
3億円超 | 4%+738万円 |
弁護士費用の中でも、主な費用である着手金と成功報酬のみにしぼって計算します。
例とする経済的利益は以下の通りです。
- 200万円の利益
- 1,000万円の利益
- 2,000万円の利益
- 5,000万円の利益
- 3億円の利益
だいたいの目安として、自分の相続額に対する弁護士費用の参考にしてください。
200万円の利益
遺産分割協議の交渉における経済的利益が200万円だった場合
着手金目安 | 200万円 × 8% = 16万円 |
成功報酬目安 | 200万円 × 16% = 32万円 |
合計 | 16万円 + 32万円 = 48万円 |
1,000万円の利益
遺産分割協議の交渉における経済的利益が1,000万円だった場合
着手金目安 | 1,000万円 × 5% + 9万円 = 59万円 |
成功報酬目安 | 1,000万円 × 10% + 18万円 = 118万円 |
合計 | 59万円 + 118万円 = 177万円 |
2,000万円の利益
遺産分割協議の交渉における経済的利益が2,000万円だった場合
着手金目安 | 2,000万円 × 5%+9万円 = 109万円 |
成功報酬目安 | 2,000万円 × 10% + 18万円 = 218万円 |
合計 | 109万円 + 218万円 = 327万円 |
5,000万円の利益
遺産分割協議の交渉における経済的利益が5,000万円だった場合
着手金目安 | 5,000万円 × 3%+69万円 = 219万円 |
成功報酬目安 | 5,000万円 × 6%+138万円 = 438万円 |
合計 | 219万円 + 438万円 = 657万円 |
3億円の利益
遺産分割協議の交渉における経済的利益が3億円だった場合
着手金目安 | 3億円 × 2%+369万円 = 969万円 |
成功報酬目安 | 3億円 × 4%+738万円 = 1,938万円 |
合計 | 1,938万円 + 969万円 = 2,907万円 |
経済的利益が大きいということは、被相続人の遺産額自体が高額であるため、相続財産の調査や遺言執行を依頼した場合の弁護士手数料も高額になります。
経済的利益に応じて、着手金や成功報酬以外に相当額のその他費用がかかっていることを忘れず、予算には余裕を持っておきましょう。
遺産相続の弁護士費用は誰がいつ払う?
遺産相続案件の弁護士費用は、弁護士に依頼した人が原則的に負担し、他の相続人は支払いの義務を負いません。
依頼を受けた弁護士は依頼人が有利になるように問題解決を目指すため、依頼人の利益が最大化するメリットがあるためです。
ただし、弁護士費用を複数人で負担することが禁止されている訳ではないため、関係性の良い相続人が複数人で弁護士に依頼すれば、費用を人数で分割して支払うことも可能です。
この章では、以下のケースごとに弁護士費用を誰がどの段階で支払うのか解説します。
- 遺言書作成
- 遺言執行
- 相続放棄・限定承認
- 遺産分割協議・調停
- 遺留分侵害請求
争いがあるケースでは、相手に非があっても弁護士費用の請求はできません。また複数人で分割して支払う場合も、事前の相談と合意が重要です。
遺言書作成
遺言書作成にかかる弁護士費用は、遺言書を作成する本人が負担します。
公正証書遺言を作成する場合には、公証人への手数料も遺言者が支払います。
一般的には、弁護士と正式に契約する際に費用を支払いますが、遺言書作成後に支払う場合もあり、支払いのタイミングは法律事務所によりけりです。
遺言書には自筆証書遺言や公正証書遺言の他にも複数の種類があり、希望によって適した種類を選ぶのが重要です。遺言者が相続についての意向を伝え、納得のいく提案をした弁護士に依頼しましょう。
遺言執行
遺言執行者に弁護士が指名されている場合、遺言執行に関する弁護士費用は、民法に定められているとおり相続財産から支払われます。
(遺言の執行に関する費用の負担)
第千二十一条 遺言の執行に関する費用は、相続財産の負担とする。ただし、これによって遺留分を減ずることができない。 |
相続財産から弁護士費用が支払われたのち、残りが相続人に分配されるのが一般的な手続きです。
また相続人が複数いる場合、1人が代表して負担するか、複数人で均等に分割して負担できます。
相続放棄・限定承認
相続の放棄や限定承認に関する費用は、原則として依頼者が負担します。
1人の相続人が全ての相続財産を引き継ぐ場合、その相続人が弁護士費用を負担しますが、相続放棄や限定承認を選択した複数の相続人が同じ弁護士に依頼する場合は、各自の負担額について話し合いでの決定が可能です。
相続人間にトラブルがなければ、費用を分割して負担するためにも、同じ弁護士への依頼をおすすめします。
遺産分割協議・調停
遺産分割の交渉、調停、審判に必要な弁護士費用は依頼人が負担します。他の相続人がトラブルの原因であっても、依頼者が他の相続人に弁護士費用を請求することはできません。
支払いのタイミングとしては、着手金は契約時に支払い、遺産分割が終了し相続財産を引き継いだ後に成功報酬を支払います。
遺留分侵害請求
遺留分侵害額請求に関する弁護士費用は、依頼人が負担します。
着手金は契約時に支払われ、遺留分侵害額請求が完了してから成功報酬が支払われるのが一般的です。
その他の案件と同じく、複数の相続人が同じ弁護士に依頼し、各自の負担額について話し合いで決定するのがおすすめです。
ただし、利益相反が生じた場合(相続人の意見が割れた場合)には、弁護士が辞任することがほとんどで、再度弁護士に個別に依頼する必要が生じ、かえって弁護士費用が割高になるおそれもあるので、その点はご注意ください。
弁護士費用が支払えない場合の対処法
弁護士費用が高額で一括払いが難しい場合には、対処可能な方法や制度があります。
- 無料相談を活用する
- 分割払いを弁護士に相談してみる
- 法テラスを利用する
弁護士への依頼を断念せず、費用の不安については対処法を検討しましょう。
無料相談を活用する
弁護士費用を抑える方法として、弁護士事務所の初回無料相談の活用が挙げられます。
無料相談で事務所や弁護士との相性や費用について確認し、適切な弁護士選びが重要です。
弁護士費用の支払いについて不安がある人は、この際にしっかりと確認・相談をしておきましょう。
分割払いにできないか相談してみる
弁護士費用を一括で支払えない場合、分割払いや着手金の後払いが可能かの相談が有益です。
【弁護士費用の一般的な支払時期】
- 相談料:初回相談が終わった際
- 着手金:弁護士が案件にとりかかる前
- 成功報酬:案件の解決後
- 日当・実費・手数料:事務所により異なる
案件が長期に渡る場合には、実費や日当・手数料はどのタイミングで支払いをするのか確認しましょう。
遺産分割協議が調停や審判に発展するなど長期にわたる場合には、弁護士費用の分割払いに対応してくれる法律事務所も多くあります。
法テラスを利用する
弁護士費用の支払いが困難な場合「法テラス」の民事法律扶助を利用し、必要に応じて弁護士費用を立て替えてもらう方法があります。法テラスが依頼人に代わって一括で弁護士費用を支払い、依頼者は分割で法テラスに費用の返済をします。
(業務の範囲)
第三十条 支援センターは、第十四条の目的を達成するため、総合法律支援に関する次に掲げる業務を行う。 一 次に掲げる情報及び資料を収集して整理し、情報通信の技術を利用する方法その他の方法により、一般の利用に供し、又は個別の依頼に応じて提供すること。 イ 裁判その他の法による紛争の解決のための制度の有効な利用に資するもの ロ 弁護士、弁護士法人、弁護士・外国法事務弁護士共同法人及び隣接法律専門職者の業務並びに弁護士会、日本弁護士連合会及び隣接法律専門職者団体の活動に関するもの |
ただしこの制度を利用するには、下記の条件を満たしている必要があります。
- 収入と資産が資力基準以下であること
- 勝訴の見込みがないとはいえないこと
- 民事法律扶助の趣旨に適すること
上記1.による「収入と資産の資力基準」は具体的には以下のとおりです。
<収入要件>
世帯人数 | 手取月収額の基準 | 家賃又は住宅ローンを負担している場合に加算できる限度額 | ||
東京・大阪など
生活保護一級地 |
左記以外 | 東京都特別区 | 左記以外 | |
1人 | 20万200円以下 | 18万2,000円以下 | 5万3,000円以下 | 4万1,000円以下 |
2人 | 27万6,100円以下 | 25万1,000円以下 | 6万8,000円以下 | 5万3,000円以下 |
3人 | 29万9,200円以下 | 27万2,000円以下 | 8万5,000円以下 | 6万6,000円以下 |
4人 | 32万8,900円以下 | 29万9,000円以下 | 9万2,000円以下 | 7万1,000円以下 |
参照元:収入要件とは | 法テラス
<資産要件>
人数 | 資産合計額の基準 |
1人 | 180万円以下 |
2人 | 250万円以下 |
3人 | 270万円以下 |
4人以上 | 300万円以下 |
参照元:資産要件とは | 法テラス
着手金や報酬金についての実際の立て替え額の基準については「代理援助立替基準(法テラス)」を参考にしてください。
法テラスの費用立て替え制度を利用すると、弁護士費用は相場より安く済み、着手金は毎月1万円程度からの分割払いが可能です。
制度を利用するための条件にはいくつか例外もあるので、詳しい内容は法テラスの無料の法律相談で確認しましょう。
制度の利用は法テラスに相談して申し込むか、法テラスと契約している弁護士事務所に直接依頼する方法があります。ただし、一部の法律事務所ではこの制度を利用できない場合もあるため、問い合わせが必要です。
弁護士費用は相続税から経費としての控除はできない
遺産相続に関する弁護士費用は、相続税の債務控除の対象にはなりません。
相続財産から控除できるのは、マイナスの財産や葬儀代のみで、それらを計上することで相続税を軽減できます。
<控除の対象になるもの>
- 葬儀費用
- 被相続人の各種税金
- 未払いの医療費
- 未払いの公共料金
- 金融機関からの借入れ
相続開始前に発生していた費用については控除されますが、弁護士費用は相続開始後に発生するため控除されません。
過去に、相続税の課税対象となる相続財産から、弁護士に遺言執行を依頼した際の報酬を控除できるかどうかが争われましたが、国税不服審判所は「相続税の計算における相続財産から弁護士費用は控除できない」との決定を出しています。
参照元:国税不服審判所 / 平13.12.25裁決、裁決事例集No.62 412頁
遺産相続の弁護士費用を安く抑える方法
弁護士費用は安ければいいわけではなく、実際に弁護士と話をしてみたうえで、信頼できるか・相続に関する知識や経験が豊富かなどを判断して決める必要があります。
しかし弁護士費用は自己負担となることが多いため、弁護士費用は少しでも安く抑えたいものです。
- 複数の事務所で見積もりをとる
- 複数の相続人で同じ弁護士に依頼する
- 自分でできることは自分でする
弁護士費用を安く抑える方法にもさまざまありますが、ここでは3つの方法について解説します。
複数の事務所で見積もりをとる
依頼する弁護士を探す段階で、初回無料相談などを利用して複数の法律事務所を訪れ、自分の案件に対する弁護士費用を比較するのが重要です。
初回の相談では、案件に関する相談はもちろん、費用についても忘れずに確認しましょう。
段階ごとに必要な費用についてくわしく説明してくれる・依頼人が提示した予算内で解決可能か検討してくれるなどの対応は、信頼できる良い弁護士選びの基準にもなります。
費用が明朗な法律事務所は、見積もりも出してくれます。遺産相続に関する弁護士費用は、法律事務所によって大きく異なるため、複数の法律事務所で見積もりを取り、比較して検討するのが得策です。
できるだけ費用を抑えながら、相性がよく信頼できる弁護士を探してみましょう。
複数の相続人で同じ弁護士に依頼する
ここまでの本文中にもたびたび出てきたとおり、相続問題を弁護士に依頼する際には、目的が同じ相続人と共同で依頼すれば、弁護士費用を複数人で分担できます。
ただし、利益相反が生じた場合(相続人の意見が割れた場合)には、弁護士が辞任することがほとんどで、再度弁護士に個別に依頼する必要が生じ、かえって弁護士費用が割高になるおそれもあるので、その点はご注意ください。
相続放棄・限定承認や遺産分割協議などは、トラブルのない相続人同士で同じ弁護士に依頼し、弁護士費用を分割して負担することで安く抑えましょう。
弁護士費用の分担方法については、事前に相続人同士で話し合って合意を得る必要があります。
自分でできることは自分でする
不要な費用を支払うリスクを避けるため、希望するゴールを具体的に定め、事前に要点を明確にしておくことが大切です。余分な手続きをせずに済めば、実費や手数料を抑えられます。
また証拠が豊富であれば問題解決の大きな手段となりますが、弁護士が証拠集めに動くと費用が発生します。自分で集められるだけ証拠を集めることで、弁護士費用の削減が可能です。
弁護士費用は弁護士の業務量に大きく関わっているため、自分でできることは積極的に自分でおこなうことが、費用を抑える結果に繋がります。
遺産相続問題の依頼は弁護士費用に納得してから!
遺産相続問題を弁護士に依頼した場合、弁護士費用は事案の複雑さに応じて大きく異なります。遺産総額が高額・相続人が多い・トラブルがあるなど、複雑な相続では費用が高額になります。
複数の弁護士事務所から取得した費用の見積もりを比較し、支払いまでの見通しを立ててから正式に依頼するのが重要です。
弁護士への遺産相続問題の依頼は、契約内容や弁護士費用についてしっかりと質問し、不安を解消して十分納得してからおこないましょう。