相続放棄で後悔しないために!知っておくべき知識と手続き方法

相続放棄で後悔しないために!知っておくべき知識と手続き方法

「被相続人の負債を引き継がないためには相続放棄をすればいい?」

「相続放棄の手続きは自分でできる?」

相続放棄の手続きは自分で行えますが、注意点や落とし穴が多いため、適切な知識と手続きの流れを理解し、慎重に行う必要があります。

相続放棄を行うかどうかを決定する前に、メリットとデメリットをよく比較し、慎重に判断することが重要です。

今回のコラムでは、相続放棄のメリット・デメリットから、相続放棄によって後悔しないためのポイントや、実際の手続きの流れなどについて解説します。

目次

相続放棄とは

相続放棄とは

相続放棄とは、相続人が家庭裁判所で手続きを行い、被相続人が遺した財産の全てを相続しないと決定する行為です。この財産には、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれます。相続放棄を行うと、最初から相続人ではなかったとみなされ、相続に関する一切の権利と責任が消滅します。

(相続の放棄の効力)第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
引用元:e-GOV法令検索 / 民法第939条

相続放棄は部分的に行うことはできず、プラスの財産とマイナスの財産すべてを放棄しなければなりません。被相続人の財産に負債が多く、そのまま相続してしまうと負債による影響を受ける可能性が高い場合には、相続放棄を検討してみると良いでしょう。

相続放棄を考える際には、自身や家族にとって相続の放棄がどのような影響をもたらすのか、慎重に考える必要があります。

手続きを行うには、家庭裁判所で必要書類を提出し、裁判所による審議を受けます。

(相続の放棄の方式)第九百三十八条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
引用元:e-GOV法令検索 / 民法第938条

なお、相続放棄には期限があり、原則として被相続人が亡くなってから3ヵ月以内に申請しなければなりません。

相続放棄と財産放棄の違い

相続放棄に似た言葉に「財産放棄」がありますが、意味と法的効果は大きく異なります。

<相続放棄>

相続放棄は、家庭裁判所において正式な手続きを経て、被相続人の財産を一切相続しない旨を表明する行為です。

相続放棄をした者は、最初から相続人として存在しなかったとみなされ、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産もすべてを相続することはありません。相続放棄をすると、遺産分割協議にも参加できなくなります。

<財産放棄>

財産放棄は、遺産分割協議において特定の遺産を相続しないと宣言する行為です。

財産放棄は法律上の正式な手続きではなく、協議内での慣例的な呼称であり、他の相続人にその権利を譲るための意思表示に過ぎず、法的に相続権を失うわけではありません。

つまり財産放棄をしても、相続人としての地位は残り、遺産分割協議に引き続き参加できます。撤回についても。家庭裁判所での手続きを必要とせずに行えます。

相続放棄は、被相続人の負債などから完全に解放されるための法的な手続きであり、財産放棄は、遺産分割協議の中で特定の遺産を相続しないと表明する意思表示であるという大きな違いがあります。

相続放棄のメリット

相続放棄のメリット

相続放棄を行う主なメリットは以下の通りです。

  • マイナスの財産を相続せずに済む
  • 相続トラブルを避けられる
  • 特定の者にすべ手相続させられる

それぞれのメリットについて解説します。

マイナスの財産を相続せずに済む

相続放棄の最大のメリットは、被相続人が抱えていた借金や債務などのマイナスの財産を引き継がなくて済む点です。

相続放棄を行うと、相続人としての権利や義務が消滅するため、借金や債務に対する法的責任を負う必要もなくなります。

相続した借金が払えない場合、自己破産を考えなければいけないケースもありますが、相続放棄をすれば、そもそも負債を相続しないため、自己破産のリスクも回避できます。

相続トラブルを避けられる

遺産を巡るトラブルは、親しい家族の間でも発生します。

相続放棄によって相続人でなくれば、相続に関連するトラブルに巻き込まれずに済みます。

相続人全員が参加して行う遺産分割協議に関与しなくてよいというのは、大きな利点です。

相続人が多い・親族間の関係が複雑で遺産分割が煩雑である場合や、遺産そのものに関心がない場合には、トラブルを避けるために相続放棄を検討する価値があります。

特定の人にすべて相続させられる

相続において、家や事業を継承する必要があったり、遺産を特定の相続人に集中させたりしたい場合、他の相続人が相続放棄を行うことでスムーズに目的を達成できるケースがあります。

例えば、被相続人の妻に遺産を集中させたい場合、子ども全員が相続分を譲渡すれば、妻にすべての遺産を相続させられます。

しかし相続放棄では、次順位の相続人に遺産が分配される可能性があるため、想定した相手にすべての遺産を相続させられない結果になる場合もあり、注意が必要です。

相続放棄のデメリット

相続放棄のデメリット

相続放棄によるデメリットはさまざまあります。

  • 相続放棄は撤回できない
  • プラスの財産も相続できない
  • 相続放棄は代襲相続が起きない
  • 生命保険や死亡退職金の非課税枠が使えない
  • 全員が相続放棄すると財産は国のものになる

ここでは、この5つのデメリットについて解説します。

相続放棄は撤回できない

相続放棄は、家庭裁判所で一度申し立てが受理されると、原則として撤回できません。そのため、相続放棄の決断をする際には、慎重に検討する必要があります。

家庭裁判所で申し立てが受理された後は、申し立て期間である3ヵ月以内であっても、原則撤回はできないため注意しましょう。

ただし、 他人から強制されたり、脅されたりして相続放棄をした場合や、詐欺や錯誤による誤解で相続権を放棄してしまった場合には、例外的に取り消しが認められるケースがあります。

未成年者の相続人が法定代理人の同意なしに相続放棄をした場合も、撤回が認められる場合があります。

相続手続きが面倒で相続放棄を選んだものの、あとから気が変わったなどの理由では、撤回は認められません。

また、家庭裁判所で相続放棄の申し立てが受理される前であれば、申し立て自体を取り下げられます。これは撤回ではなく、単なる取り下げにあたるためです。相続放棄の申し立ての取り下げを行いたい場合は、早めに行うのが重要です。

プラスの財産も相続できない

相続放棄は、相続に関する一切の権利を放棄するため、被相続人の借金や負債などのマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットがある反面、プラスの財産も相続できなくなります。

プラスの財産とは、預貯金や不動産・株式・貴金属・車など、価値のある資産です。

相続放棄をする際には、慎重な判断をする必要があります。

相続放棄では代襲相続が起きない

相続放棄を行うと、その相続人は最初から相続権を持っていなかったことになるため、相続放棄をした者の子など直系卑属は代襲相続人になりません。

代襲相続とは、被相続人の直系卑属(子、孫など)が相続人となる制度です。これは、相続人が被相続人よりも先に亡くなった場合や、相続人が相続欠格・排除などの特定の理由で相続権を失った場合に適用されます。

相続放棄は、自身が相続権を放棄するだけでなく、その子たちも相続権を失うことを意味するため、慎重な検討が必要です。

生命保険金や死亡退職金の非課税枠が使えない

生命保険の死亡保険金や死亡退職金は、受取人固有の権利であり、遺産分割の対象となる相続財産ではありません。

そのため相続放棄をしても、受取人として指定されていれば受け取りが可能です。

生命保険の死亡保険金や死亡退職金には、通常「500万円×法定相続人の数」の相続税の非課税枠が設けられています。

しかし相続放棄をするとこの非課税枠が使えなくなるため、生命保険金や死亡退職金の受け取りによって相続税の申告義務が生じた場合も、控除は受けられません。

全員が相続放棄すると財産は国のものになる

相続人全員が相続放棄し、被相続人の財産を引き継ぐ者がいなくなった場合、家庭裁判所によって選任された相続財産管理人が、被相続人の財産の調査や処分、精算を行います。

その過程で「特別縁故者」として、故人の世話をしていた者などに対して財産の分与が認められるケースもあります。

しかし特別縁故者がいない場合や、特別縁故者に分与してもなお財産が残った場合は、その財産は最終的に国に帰属します。

特別縁故者とは、被相続人と生前に特別な関係があった者で、遺産を受け取る資格があると認められた者を指します。特別縁故者として認定されるには、家庭裁判所への申し立てが必要です。

(特別縁故者に対する相続財産の分与)第九百五十八条の二 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
引用元:e-GOV法令検索 / 民法第958条の2

特別縁故者にも該当者がなく、引き取り手がいない財産は、国の財産として帰属されます。

相続放棄で後悔しやすいポイント

相続放棄を選択する際には、慎重な判断が求められます。

相続放棄は撤回できないため、決定後に後悔してもどうにもなりません。

  • あとから財産が見つかっても相続放棄は撤回できない
  • 相続財産を使うと相続放棄は無効になる
  • 相続放棄をしても財産の管理義務は残る
  • 連帯保証人としての保証債務は相続放棄できない

相続放棄で後悔しやすいポイントとして以上の4つを挙げ、解説します。

あとから財産が見つかっても相続放棄は撤回できない

相続放棄をすると、放棄した者は最初から相続権を持っていなかったと見なされるため、後日新たに財産が見つかったとしても、相続放棄をした者にはその財産を相続する権利がありません。

相続放棄によって負債から解放されたと感じていても、あとで不動産・高額な預貯金などが見つかった場合、相続放棄をした者はそれらの財産を受け取れません。

また、遺産分割協議で財産の分配が決まっていないうちに相続放棄をした場合、その後に新たな財産が発見されても、相続放棄を撤回して相続に参加するのは不可能です。

相続財産を使うと相続放棄は無効になる

相続放棄を検討している段階で被相続人の財産を使ってしまうと、単純承認とみなされ相続放棄ができなくなる可能性があるため、注意が必要です。

第九百二十一条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
引用元:e-GOV法令検索 / 民法第921条第1項

例えば、被相続人の預貯金を引き出す・遺産の一部を売却する・不動産の名義を変更するなど、相続財産を処分すると単純承認とみなされます。

また被相続人の借金を相続財産で支払うことも、単純承認とみなされる可能性があります。

単純承認とは

単純承認はもっとも一般的な相続方法で、相続が発生した際に相続放棄または限定承認を行わなかった場合は、単純承認したものとみなされます。

単純承認のために必要な手続きはありません。

(単純承認の効力)第九百二十条 相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。
引用元:e-GOV法令検索 / 民法第920条

単純承認は、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も、全てを相続します。

一度単純承認をすると、相続放棄や限定承認はできなくなるため、相続放棄を考えている場合には、単純承認とみなされる行為に注意が必要です。

相続放棄をしても財産の管理義務は残る

相続放棄をしても、相続財産の管理責任から完全に解放されるわけではありません。

次の相続人や相続財産管理人に引き渡すまでの間、管理義務が生じる可能性があります。

(相続の放棄をした者による管理)第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
引用元:e-GOV法令検索 / 民法第940条第1項

被相続人と同居していた家・被相続人の土地や建物などを使用している場合は、次の管理者に引き渡すまで管理責任が生じます。

不動産や建物の場合、倒壊などのリスクがあるため注意が必要です。

相続財産の管理を怠り、近隣の家屋や通行人に損害を与えると、損害賠償請求を受ける可能性がある他、不動産の修繕などの費用を負担する必要が生じる場合があります。

連帯保証人としての保証債務は相続放棄できない

相続人が、被相続人の債務の連帯保証人だった場合、この連帯保証債務は相続放棄では消滅しません。

相続放棄によって被相続人の主債務が消滅するわけではなく、連帯保証債務は相続によって引き継いだものではないため、相続放棄はできません。

ただし、被相続人が他者の借金に対して連帯保証人になっていた場合、相続放棄を行えば連帯保証債務を相続せずに済みます。

相続放棄のできる期限は3ヵ月

相続放棄の期限は「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヵ月以内」と民法に定められています。

(相続の承認又は放棄をすべき期間)第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
引用元:e-GOV法令検索 / 民法第915条第1項

期限の起算点は、被相続人の死亡を知った日ではなく、自分に相続権があると認識したときです。

被相続人が亡くなった時点で相続人としての立場が明確でなかった場合、実際に相続権があると知った日が期限の起算点になります。

相続放棄の手続きには、家庭裁判所に申述書を提出し、審議を受ける必要があります。

手続きの煩雑さを考えると、3ヵ月という期間は十分とはいえません。

期限の3ヵ月を過ぎてしまうと、単純承認を選択したとみなされます。

被相続人のプラスの財産だけでなく、負債や債務などマイナスの財産も相続する結果になるため、相続放棄を検討する場合は早めの行動が重要です。

相続放棄の手続きの流れ

相続放棄の手続きの流れ

相続放棄の手続きは、以下の通りです。

  • 費用の準備
  • 必要書類の準備
  • 家庭裁判所に書類を提出する
  • 家庭裁判所からの「照会書」に回答して返送する
  • 家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届く

それぞれの手続き内容について解説します。

費用の準備

相続放棄の手続きを自分で行う場合、主な費用項目は以下の通りです。(2024年4月現在)

家庭裁判所への申述費用

  • 収入印紙:相続放棄申述人ひとりにつき800円
  • 郵便切手(郵券)代:金額は裁判所によって異なります。提出する家庭裁判所に確認しましょう(通常400円~500円程度)

必要書類の取得費用

  • 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本:750円
  • 被相続人の住民票除票または戸籍の附票:300円
  • 申立人の戸籍謄本:450円

本籍地が遠方の場合は、郵送での取り寄せになるため、往復の送料分の切手代が必要です。

自分で手続きする場合、費用は合計3,000~5,000円程度ですが、弁護士などの専門家に依頼すると、弁護士費用がかかります。弁護士費用の中には実費として、申し立てのための費用や必要書類取得のための費用も含まれます。

必要書類の準備

「費用の準備」の項目に挙げた書類は最低限必要な書類であり、申立人と被相続人の関係性などによって追加で書類が必要になる場合があります。

戸籍謄本の取得には、転籍を繰り返しているなど、手間や日数がかかるケースもあるため、申し立て期限までの余裕を持って行いましょう。

家庭裁判所へ提出する書類

  • 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
  • 被相続人の住民票除票または戸籍の附票
  • 申立人の戸籍謄本
  • 相続放棄申述書

「相続放棄申述書」は申述人が相続放棄を行うために提出する書類で、被相続人や相続人の基本情報・相続放棄の理由・相続財産の概要などを記入します。

相続放棄申述書の用紙は、直接家庭裁判所に行って受け取ることもできますが、裁判所の公式サイトからのダウンロードも可能です。

申立人が成人か未成年(18歳未満)かによって、使用する様式が異なります。

相続の放棄の申述書(成人)

相続の放棄の申述書(未成年者)

裁判所の公式サイトには記載例も提供されています。参考にしながら、丁寧に正確に記入しましょう。

雑字や誤字で書類が判読できなかったり、相続放棄申述書に不備があったりすると、相続放棄の申し立てが認められない可能性があります。

記入漏れなどの不備がないよう、十分な注意が必要です。

家庭裁判所に書類を提出する

必要書類がすべて揃ったら、家庭裁判所に提出します。

相続放棄の申述書の提出先は、被相続人の最後の住所地を管轄している家庭裁判所です。

最後の住所地とは被相続人が死亡した時点の住民票の所在地を指し、管轄の家庭裁判所は、裁判所の公式サイトで確認できます。

裁判所の管轄区域

提出方法としては、家庭裁判所の窓口に直接持参する方法と、郵送で提出する方法があります。

家庭裁判所に持参する場合、事前の予約は不要ですが、どの窓口に提出するかなどは、各家庭裁判所の公式サイトや電話などで確認しておくと良いでしょう。

郵送で提出する場合は、書類の紛失を防ぐために、書留や特定記録郵便など配達記録が残る方法の利用をおすすめします。

家庭裁判所からの「照会書」に回答して返送する

必要書類を提出して申し立てると、ケースによっては、数日後に裁判所から「照会書」と「回答書」が送られてきます。

申述された相続放棄が真意によるものか、などを裁判所が確認するために行われるようです。

質問内容は「相続放棄の申述が真意であるか」「被相続人の相続開始を知ったのはいつか」「相続放棄をする理由」などです。相続放棄の申し立てが3か月以上経過してからの場合は、その理由を尋ねられます。

同封されている回答書に慎重かつ適切に記入し、できるだけ迅速に返送しましょう。

回答書への記入が不十分だったり、適切でなかったりすると、相続放棄の申し立てが却下される可能性があります。

一度却下されると、再度の相続放棄の申請はできないため、十分な注意が必要です。

何か疑問や不安な部分がある場合は、弁護士など専門家の助言を求めると安心です。

家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届く

相続放棄の申し立てが問題なく受理されると、家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が送られてきます。

この通知書が届くと、相続放棄が正式に完了し、被相続人の債務について原則として責任を負う必要がなくなります。

「原則として」と断る理由は、相続放棄が受理されても、債権者がその有効性を争う場合があるためです。

例えば、相続放棄の前に財産を処分していたなど、法定単純承認に該当するケースです。

このような場合、相続放棄の無効が主張されることもあるため、問題が生じた場合はすぐに弁護士などの専門家に相談しましょう。

相続放棄申述受理通知書は、相続放棄を正式に証明する重要な書類で、債権者や金融機関に対して、相続放棄を証明するために使用されます。 

再発行できないため、必要な場合にすぐ取り出せるよう、安全な場所でしっかりと保管してください。

相続放棄の手続きを専門家に任せた方が良いケース

相続放棄の手続きは、複雑な法的問題が絡んでいるケースが多くあります。

財産状況が不透明だったり、複数の相続人の意見が分かれている場合などは、専門家の助言やサポートを受けた方が良いでしょう。

以下は、相続放棄の手続きを専門家に任せた方が良いと考えられるケースと、その理由についてです。

1.財産状況が不明確で、負債が存在する可能性がある

   相続放棄を行う理由の多くは、被相続人が多額の借金を抱えている場合です。

相続財産の全体像が不明確であれば、どのくらいの負債があるかを確定させる必要があります。

弁護士などの専門家に依頼することで、正確な財産調査を迅速に行えます。

2.相続放棄を巡ってトラブルが生じている

   相続放棄に関して相続人間で揉めていたり、債権者からの取り立てを受けていたりする場合も、弁護士などの専門家に相談をおすすめします。

法的なサポートによって債権者からの取り立てを防ぐことができ、その他のトラブル解決のアドバイスを得られます。

3.相続税の計算や遺産分割が複雑

   相続税の計算や遺産分割が複雑な場合、税理士や弁護士などの専門家に依頼すれば、適切な手続きを行ってもらえます。

専門家に任せることで、相続放棄を含む相続に関連する問題全般にわたって、スムーズで安心な解決を図れます。

財産の内容が不明確な場合やトラブルが予想される場合、弁護士などの専門家の助言とサポートが重要です。

相続放棄で後悔しないために

せっかく行った相続放棄があとになって裏目にでるような後悔をしないために、相続放棄を行う際には十分な検討や注意をしましょう。

  • 相続放棄手続きは早めに行う
  • 期間延長手続きを検討する
  • 相続財産調査をしっかり行う
  • 相続財産に手をつけない
  • 相続放棄の限定承認を検討する

相続放棄で後悔しないために取れる対策について解説します。

相続放棄手続きは早めに行う

相続放棄の手続きの期限は、3ヵ月しかありません。

期間内に相続放棄の手続きを行わないと、相続を承認したとみなされます。

葬儀や被相続人にまつわる手続きなどで忙しい時期のため、3ヵ月はあっという間に過ぎてしまいます。

相続放棄を考えている場合は、できるだけ早めに必要書類の準備や手続きを開始してください。

相続発生後の手続きや財産調査のスケジュールを立て、期限までの3ヵ月を無駄なく使いましょう。

事前に家庭裁判所への手続きや必要書類を確認しておくと、戸籍の収集などがスムーズに進められます。

相続人同士で意見が異なる場合や、他の相続問題がある場合は、弁護士などの専門家への早めの相談が得策です。

相続放棄は慎重な判断と正確な手続きを必要とするため、財産調査や手続きについても専門家の助けを借りるのが有益といえます。

期間伸長手続きを検討する

相続放棄の3ヵ月の期限は、財産調査や遺産分割の問題・その他の状況によって3ヵ月で決断できない場合があるため、期限までに家庭裁判所に申し立てを行うことで、延長してもらえる場合があります。

ただし、期間伸長が認められるには相当な理由が必要なため、慎重な計画が重要です。

例えば以下のケースは、期間伸長の理由となり得ます。

・被相続人の財産状況が不明確で調査のために3か月では足りない

・戸籍の収集に時間がかかる

・複数の相続人の意見の調整に時間がかかる

・申立人自身の健康上の問題がある

反対に、申立人の単なる時間稼ぎや怠慢が理由と判断される場合は、家庭裁判所から期間伸長の申し立てが却下される可能性があります。

期間伸長が認められると、家庭裁判所が判断した期間(通常1~3ヵ月)、相続放棄の手続き期限が延長されます。

期間伸長の申し立ては再度行えますが、裁判所が納得できる理由がさらに必要であり、二度目以降は承認されにくくなるのが実情です。

期間伸長の申し立ても、相続放棄の期限の3ヵ月以内に行う必要があるため、どちらにしても早めに判断しなければいけません。弁護士など専門家に、相続放棄の手続きの計画や期間伸長の申請に関する助言を得るのが安全でしょう。

相続財産調査をしっかり行う

相続放棄を検討する際には、事前に被相続人の財産を調査しておかないと、最終的に損をしてしまう可能性があります。

例えば、被相続人に500万円の借金があるため相続放棄をしたものの、あとで1000万円以上の財産が見つかった場合、結果的に500万円以上のプラス財産を放棄してしまったことになります。

相続放棄は一度承認されると撤回できないため、手続き前の相続財産の調査が最重要事項です。

財産調査を適切に行うことで、被相続人の財産の全体像を把握し、プラスの財産とマイナスの財産のバランスを理解でき、最適な判断ができます。

自分で財産調査をすることも可能ですが、専門的な知識が必要な場合も多いため、弁護士などの専門家への依頼がおすすめです。

専門家のサポートを受けることで、借金の有無やプラスの財産の存在などを的確に確認でき、相続放棄をするかどうかの判断を安心して行えます。

相続放棄を行う前の適切な財産調査は、後悔やトラブルを防ぎ、正確な情報をもとにした最善な決断につながります。

相続財産に手をつけない

相続放棄を検討している段階で、相続財産を自分の支出のために使用すると、単純承認として扱われ、相続放棄ができなくなる可能性があります。

これは、相続放棄を考える場合に非常に重要なポイントです。

相続財産の分配が決定するまで、または相続放棄の手続きが完了するまでは、被相続人の預金やその他の資産を引き出して自分の費用に使用したり、被相続人の借金を返済したりしてはいけません。

相続放棄を検討している場合、被相続人の財産や債務には一切手をつけず、家庭裁判所での手続きが完了するまで慎重に行動しましょう。

一度単純承認とみなされると相続放棄はできなくなるため、十分な注意が必要です。

相続放棄の限定承認を検討する

限定承認は、プラスの財産を相続しながら、マイナスの財産はプラスの財産の範囲でのみ負担する、相続の選択肢のひとつです。

(限定承認)第九百二十二条 相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。
引用元:e-GOV法令検索 / 民法第922条

プラスとマイナスの財産のどちらが多いか分からない場合や、マイナスの財産があってもプラスの財産でカバーできる可能性がある場合に有効です。

ただし、限定承認を行うためには相続人全員の同意が必要で、ひとりでも反対者がいると限定承認はできません。 

また限定承認は相続放棄よりも手続きが複雑で、時間と労力がかかります。

相続財産の調査や相続人間の調整が必要であり、遺産分割なども含めた手続きを進めるためには、弁護士など専門家のサポートを受けるのが望ましいでしょう。

相続放棄と違い、限定承認では被相続人のプラスの財産を引き継ぐ権利を失わないため、ケースによっては、相続放棄でなく限定承認を選ぶ方がベストな場合があります。

相続放棄に不安な点があれば弁護士に相談する

相続放棄に不安な点があれば弁護士に相談する

相続放棄は自分で手続きすることも可能ですが、専門的な知識が必要であり、一度承認されると撤回できないリスクもあるため、慎重な判断が求められます。

相続放棄の期限である3ヵ月の間に、迅速に正確な判断をし、書類を不備なく揃えるのは個人では難しい作業といえます。

相続放棄を後悔しないためにも、早い段階で弁護士に相談し、相続放棄すべきかどうかの判断や、財産調査・申し立て手続きなどを任せるのが最良の手段でしょう。

法律の専門家である弁護士にはあらゆる代理権があるため、相続全体に関わるトラブルの解決なども一任できます。

相続放棄に関連する不安や疑問がある場合は、早めに弁護士のサポートを求めましょう。

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