相続放棄のメリット・デメリットを現役弁護士が解説!

相続放棄のメリット・デメリットを現役弁護士が解説!

相続という言葉は知っているけれど、実際に相続を経験した方は多くないと思います。親や親戚がお亡くなりになったときに起こる相続ですが、相続の放棄ができるということはご存じでしょうか。

今回の記事では、相続放棄の概要を説明した上で、相続放棄のメリット・デメリットや、相続放棄をするための手続きの流れについて現役弁護士が徹底解説します。

相続が発生した場合に備えて相続放棄のことを知っておきたい方や、相続放棄をしようか検討している方は、ぜひ最後までお読みください。

 

目次

相続放棄とは?

相続放棄とは、一言でいうと亡くなった人の財産についての一切の相続権を放棄することです。ここでいう「財産」とは、土地や建物などのプラスの財産と借金などのマイナスの財産の両方を含みます。

相続される人を被相続人、相続する人を相続人と呼びます。典型的には親が被相続人、その配偶者や子が相続人であることが多いでしょう。

 

民法によれば、相続放棄をすると「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。」と定められています。

つまり、相続放棄をするともともと相続人ではなかったと扱われるため、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続することはありません。

 

他に相続人がいた場合、その人との関係では相続放棄をした人は相続人とは扱われず、他の相続人で遺産分割協議などが行われます。

 

相続の際に選択できる3つの方法

親が亡くなるなどして相続が起こった際、選択できる方法としては単純承認、限定承認、相続放棄の3つの方法があります。

ここでは、相続放棄を含め、これら3つの方法について詳しく解説します。

 

単純承認

単純承認は最も多い相続の方法で、被相続人の相続財産を全て相続する方法です。すなわち、プラスの財産もマイナスの財産も全て相続するため、明らかにマイナスの財産が多い場合は次の限定承認か相続放棄を選択するほうが望ましいでしょう。

 

なお、単純承認を選択する場合、家庭裁判所などに手続きを行う必要はありません。相続が開始したことを知った時から3か月以内に限定承認または相続放棄の申述を行わない場合は、単純承認したものとみなされます。

限定承認

限定承認とは、相続財産の範囲内でマイナスの財産を清算し、プラスの財産があればそれを相続するという方法です。

例えば、被相続人には土地や建物など2000万円のプラスの財産がある一方で、1000万円の借金があったとします。この場合において限定承認すると、2000万円ー1000万円=1000万円の限度で相続をすることができます。

 

このように、限定承認を行うとプラスの財産だけを相続することができるので、相続財産がプラスなのかマイナスなのか判然としない場合には、限定承認を検討すべきでしょう。

相続放棄

相続放棄をすると、先ほども説明したとおり、はじめから相続人とならなかったものとみなされます。よって、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続することはありません。

被相続人に多大な借金があったことが明らかである場合などは単純承認ではなく相続放棄をすべきでしょう。

 

相続放棄のメリット

放棄という言葉を聞くとマイナスのイメージを持つ方がいるかもしれませんが、実は相続放棄にはさまざまなメリットがあります。

以下では、相続放棄をすることによる主なメリット3つを挙げて詳しく解説します。

 

借金などのマイナスの財産を相続しなくてすむ

相続というと土地や建物といったプラスの財産をイメージされる方が多いと思いますが、借金などのマイナスの財産も全て相続します。よって、プラスよりもマイナスの財産が多い場合、相続をすると不利になってしまうのです。

例えば親が莫大な借金をしていた場合、親が亡くなるとその借金をまるまる相続することになります。自分自身は一銭も借金をしていないのに、親の借金を相続した結果、借金取りが毎日訪ねてくるという事態になりかねないのです。

 

親が借金をしていて返済催促の電話が毎日かかってくる姿を見ているような場合、相続放棄を検討したほうがよいでしょう。

 

他の相続人と関わりを持たなくてすむ

親などの被相続人の財産について、マイナスよりプラスが多い場合、経済的には相続をしたほうが得です。しかし、相続放棄をしたほうがメリットがある場合があります。

例えば、相続人間の仲が悪く相続をすると争いが起こるような場合、相続を放棄すれば争いに巻き込まれなくて済みます。相続は骨肉の争いとも言われ、遺産が多いほど相続人間で争いになる傾向があります。

財産はいらないから争いに巻き込まれたくない方にとっては、相続放棄はメリットといえるでしょう。

 

遺産分割せず特定の相続人に遺産を相続させることができる

相続放棄をした場合、はじめから相続人とは扱われないため、相続権は他の相続人に移ります。

 

例えば、子どもが3人いる父親が亡くなり、長男、次男、三男が相続人になったとします。この場合において、遺産分割協議をすることなく長男に全ての遺産を相続させたい場合、次男と三男が相続放棄をすれば、長男が全ての遺産を相続することができます。

 

相続放棄のデメリット

相続放棄のメリットとして主に3つを解説しましたが、相続放棄には当然デメリットもあります。以下では主なデメリット2つを解説します。

 

土地や建物などプラスの財産が相続できなくなる

相続が起きると、被相続人のプラスの財産とマイナスの財産の全てを相続します。マイナスの財産が多い場合は相続放棄をすることによるメリットがありますが、プラスの財産が多い場合はデメリットになります。

例えば、相続人に土地や建物などの財産があった場合、相続放棄をするとこれらのプラスの財産を相続できなくなりますので、注意が必要です。

 

なお、マイナスの財産だけを相続放棄して、プラスの財産だけを相続するというような一部相続放棄はできません。相続放棄をする場合は全ての財産を相続放棄する必要があります。そのような場合は限定承認を検討すべきでしょう。

 

死亡保険金の非課税枠が使用できなくなる

死亡保険金は相続税の対象ですが、残された家族の生活保障という役割があるため、非課税枠というものが設定されています。

死亡保険金の非課税枠とは、被相続人が生前に加入していた生命保険等から支払われる保険金に対して、一定額まで相続財産から控除できる枠のことです。相続人が死亡保険金を受け取る場合、相続人1人につき500万円の非課税枠があります。

 

相続放棄をした場合でも、死亡保険金については受け取ることができます。死亡保険金は、受取人の固有の財産とされているため、民法上は相続財産とは扱われないからです。

しかし、税法上は相続財産として扱われるため、相続放棄をした人は保険金を受け取っても非課税枠を利用できなくなります。

 

相続放棄ができる期間

 

相続放棄にメリットが感じられる場合には相続放棄をすべきですが、単純承認と異なり、相続放棄ができる期間は限られています。

具体的には、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に相続放棄または限定承認をしなければなりません。

この3か月の期間は熟慮期間と呼ばれています。

 

相続の開始があったことを知った時から3か月以内に相続放棄または限定承認をしなかった場合、単純承認をしたものとみなされてしまいます。

もともと単純承認をする予定であったのであれば問題ないですが、被相続人に多大な借金があった場合などで相続放棄をする必要がある場合は、熟慮期間内に相続放棄をしなければ単純承認をしたとみなされてしまい、後から相続放棄をすることはできなくなってしまうのでご注意ください。

 

「相続の開始があったことを知った時」というのは、通常は被相続人が死亡した日のことが多いと思いますが、そうとは限らない場合もあります。

たとえば以下のような場合、被相続人が死亡した日よりも後に「知った」とされることがあります。死亡日よりも後が「相続の開始があったことを知った時」になる場合があるため、死亡日から3か月が経過していたとしても相続放棄ができるときがあります。よって、死亡日から3か月が経過していたとしてもあきらめず相続放棄できるかどうかを家庭裁判所に確認してみるとよいでしょう。

 

孤独死の場合

親が一人暮らしをしており、亡くなったことにしばらく気づかなかった場合などは死亡日よりも後に相続の開始を知ることになります。

孤独死の場合、死亡した日がはっきりしないときは警察により死亡推定期間が発表されます。通常は警察から連絡があった時に親の死亡を知ることになるでしょう。

例えば一人暮らしの親が孤独死をしたもののしばらく発見されず、2023年7月1日に発見され、その日に警察から連絡があった時は、2023年7月1日が「相続の開始があったことを知った時」になります。

 

疎遠の場合

兄弟に子どもがおらず、両親も死亡しているような場合、兄弟が死亡すると兄弟間で相続が起こるときがあります。兄弟同士が疎遠で何年も連絡していないような場合、兄弟が死亡してもしばらくの間気づかないこともあるでしょう。

 

また、親と仲が悪く何年も連絡を取っていないという方もいるかもしれません。

親や兄弟と疎遠の場合、死亡したことを知るのは、死亡日よりも後といったケースが多いでしょう。この場合は孤独死の場合と同様、親や兄弟の死亡を知った日が「相続の開始があったことを知った時」になります。

 

相続放棄の手続きと費用

相続放棄は、相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に対し相続放棄の申述をする必要があります。

以下では具体的な相続放棄の手続きの流れとかかる費用を説明します。

 

相続財産の調査

被相続人が死亡したことを知ったら、まずは相続財産の調査を行いましょう。被相続人の財産がプラスかマイナスかによって、単純承認、限定承認、相続放棄のいずれを選択するかが異なってくるからです。

 

土地や建物などの不動産や銀行口座にある預貯金であれば調査しやすいと思いますが、カード会社から借りていた借金などはわかりにくいことが多いです。

十分な調査をせずプラスの財産しかないと考えて単純承認をした結果、後になって多大な借金をしていることがわかったというケースもあります。

特にマイナスの財産についてはしっかりと調査をしましょう。以下はマイナスの財産の調査方法の一例です。

 

  • クレジットカード会社からの借り入れ

JICC(日本信用情報機構)という信用情報機関に確認します。

 

  • 消費者金融からの借り入れ

株式会社CICという信用情報機関に確認します。

 

  • 銀行からの借り入れ

KSC(全国銀行個人情報センター)という信用情報機関に確認します。

 

必要書類の準備

相続財産の調査の結果、相続放棄をすることが決まったら必要書類を準備します。相続放棄をする人と被相続人との関係によって必要書類が異なってきますので注意が必要です。

以下では被相続人との関係によって必要となる書類を分類しました。基本的には被相続人の死亡が確認できる書類と、自分が相続人であることが確認できる書類が必要です。書類は主に戸籍謄本ですが、取得費用として300円~750円程度がかかります。

 

必要となる人 書類
共通して必要となる書類 被相続人の住民票除票または戸籍附票
申述人の戸籍謄本
配偶者 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍を含む。以下同じ。)謄本
被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
本来の相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
両親や祖父母 被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
被相続人の子で死亡者がいれば、その子の出生時から死亡時までの戸籍謄本
被相続人の直系尊属に死亡者がいれば、その者の死亡の記載のある戸籍謄本
兄弟姉妹や甥姪 被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
被相続人の子で死亡者がいれば、その子供の出生時から死亡時までの戸籍謄本
被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本
申述人が甥姪の場合、本来の相続人の死亡の記載のある戸籍謄本

 

相続放棄申述書の作成

必要書類をそろえたら、家庭裁判所に提出する相続放棄申述書を作成します。相続放棄申述書の作成に慣れている方は少ないと思いますが、家庭裁判所に相続放棄申述書の記入例がありますので、これを参考にして作成するとよいでしょう。

 

相続放棄申述書の書式と記入例

https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazisinpan/syosiki_01_13/index.html

 

相続放棄申述書は成年と未成年で異なるため注意が必要です。

もし自分で作成するのは不安という方は、弁護士や司法書士などの専門家に作成を依頼することもできます。弁護士や司法書士に相続放棄申述書の作成を依頼した場合、3~5万円程度の費用がかかります。

 

家庭裁判所への提出

相続放棄申述書を作成したら、必要書類とともに家庭裁判所へ提出します。家庭裁判所はどこでもよいわけではありません。

提出先の家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。被相続人が亡くなったときに住んでいた住所を調べる必要があります。

 

管轄裁判所が判明したらそこへ相続放棄申述書を提出しますが、遠方の場合は郵送によることも可能です。なお、印紙や郵券も必要です。相続放棄の申述書に添付する収入印紙代は、申述人1人につき800円、連絡用の郵券代は500円程度です。

 

郵券代は家庭裁判所によって若干異なるため、事前に家庭裁判所に連絡して確認しておくとよいでしょう。

 

家庭裁判所からの照会書への回答

相続放棄申述書を提出後、2週間くらいまでの間に家庭裁判所から照会書が届くことがあります。照会書により主に以下の内容が照会されます。

 

  • 相続の開始があったことを知った日
  • 相続放棄の理由

 

照会書は家庭裁判所が相続放棄を申述した人の意思を確認するためのものですので、必ず回答するようにしましょう。回答せずに放置した場合、相続放棄の申述が却下されてしまう場合もあります。

 

相続放棄申述受理通知書の送付

回答書の回答に問題がなければ、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が送付されてきます。この通知書の送付をもって相続放棄の手続きが完了します。

この相続放棄申述受理通知書は、相続放棄が受理されたことを証明する公的書類です。万が一被相続人の債権者から貸金返還請求などがされた場合に、相続放棄したことを示す重要な書類となりますので、無くさないようにしてください。

 

相続放棄ができないケース

相続放棄は、相続の開始があったことを知った時から3か月以内、いわゆる熟慮期間内に行う必要があることを説明しました。熟慮期間を過ぎてしまうと相続放棄はできなくなります。

それ以外にも相続放棄ができなくなるケースがあります。熟慮期間内を過ぎた場合のほか、以下の2つの場合には単純承認をしたとみなされてしまい、相続放棄をすることができません。

 

相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき

相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、相続放棄ができません。例えば親が被相続人である場合に、親の遺産である土地や建物を売却したりしてしまうと相続放棄ができなくなります。

 

相続財産の全部若しくは一部を隠匿等したとき

相続放棄をした場合であっても、相続財産の全部または一部を隠匿したり、預金口座にあったお金を使ってしまったり、相続財産目録中に意図的に相続財産を記載しなかったときは相続放棄ができなくなります。

 

相続放棄をしたとしても、こういったことが後で発覚すると単純承認とみなされてしまいますので、遺産を隠したり意図的に目録から除外することはやめましょう。

 

相続放棄の注意点

以下では、相続放棄をする際または相続放棄をした後の注意点をお伝えします。

 

相続放棄の撤回は不可能

相続放棄申述受理通知書が送付された後は、もはや相続放棄を撤回することはできません。熟慮期間内であったとしても撤回は不可です。

撤回を認めてしまうと、相続放棄を前提に遺産分割協議などを進めていた他の相続人や、相続放棄を確認して債権管理を行っていた債権者に不測の不利益が発生するからです。

 

よって、相続放棄は相続財産を詳細に調査した上で、慎重に行う必要があります。ただし、以下のような事由に該当する場合は相続放棄の取消しができる可能性があります。

 

  • 詐欺または強迫により相続放棄がなされた場合
  • 未成年者が法定代理人の同意を得ずに相続放棄をした場合
  • 成年後見人が相続放棄をした場合

 

相続放棄の取消しをする場合、家庭裁判所に申述しなければなりません。ただし、一般の取消しと同様、追認をすることができる時から6か月間行使しない場合は時効によって消滅してしまいます。

 

相続放棄の取消し事由はかなり限られた場合であることから、取消しができると安易に考えないようにしましょう。

例えば相続放棄をした後に被相続人に多大な財産があった場合などは相続放棄を撤回または取消したいでしょう。しかしそのような理由で撤回や取消しを行うことはできません。

 

生前の相続放棄は不可能

相続放棄は相続が開始された時、つまり被相続人が死亡した時から可能です。よって、被相続人の生前にあらかじめ相続放棄をしておくことはできません。

例えば親に莫大な借金があることがわかっており、忘れないように生前に相続放棄をしておく等はできないのです。家庭裁判所に相続放棄申述書を提出しても受理してもらえません。

相続放棄をしたい場合、相続の開始があったことに注意しておく必要があります。

 

相続人とのトラブルの可能性

相続放棄をすると、相続放棄をした人ははじめから相続人でなかったものとみなされます。その結果、本来の相続人が相続するはずであった財産は別の相続人へ相続されることになります。

ここで、相続放棄をしたことは他の相続人には通知されないことに注意が必要です。普段から相続人間で連絡を取り合っている場合などは問題ないと思いますが、相続人間が疎遠であったり仲が悪い場合には、相続放棄をしたことを知らない相続人が出てくることが考えられます。

 

プラスの財産だけであれば問題にはならないかもしれませんが、マイナスの財産の場合は大変です。自分は相続人ではないと思って安心していたら、ある日突然債権者から支払の催促が来て、初めて相続放棄がされて自分が相続人となったことを知ったというケースもあります。

 

例えば、自分の兄が亡くなったことを知ったが、兄には子どもがいたので自分は相続人にはならないと思っていたところ、子どもが相続放棄をしたため弟である自分に相続順位が回ってきたようなケースです。

 

このように、相続放棄をしたことは他の相続人には知らされないため、後々相続人間で揉めることがないよう、相続放棄をした場合は他の相続人に通知しておくことをおすすめします。

 

共有名義の相続財産の手続きの複雑化

相続人が複数いる場合、被相続人の土地や建物の財産は遺言がなければいったんは共有となります。相続が開始した後に相続放棄がされると、相続放棄をした人ははじめから相続人ではなかったとみなされるため、その人を除いた相続人間で遺産分割協議がなされることになります。

相続放棄をした人によっては次順位に相続権が移る場合があり、そういった場合に共有財産が存在すると相続手続きが複雑化するおそれがあります。

よって、相続放棄をする場合は、残された相続人の手続きの複雑化にも配慮するようにしましょう。

 

相続放棄に関するQ&A

以下では、相続放棄に関するよくある質問に回答します。

 

親が亡くなったことを知らず死亡日から3か月が過ぎてしまいました。相続放棄できますか?

相続放棄ができる期間は「相続の開始があったことを知った時から3か月」であり、死亡日から3か月ではありません。よって、親が死亡したことを知らなかったときは、死亡したことを知った日から3か月となるため、死亡日から3か月を過ぎていたとしても相続放棄ができる可能性があります。

 

もっとも、死亡したことを知らなかったから必ず相続放棄ができるというわけではなく、家庭裁判所に対して知らなかったことについての十分な説明が必要です。

 

例えば親と同居しておらず親が遠方に住んでいて気づくのが遅れたり、兄弟が疎遠で死亡したことを全く知らなかったりした場合は十分な理由となることが多いでしょう。

逆に親と同居していて死亡を容易に知り得る状況のような場合は、知らなかったと言っても通用しない場合があります。

 

親が多大な借金を負っていたため、親の財産を相続放棄しました。自分の子供に相続されてしまうのでしょうか?

相続放棄とよく勘違いされる制度として「代襲相続」があります。代襲相続とは、相続人となるべき人が、被相続人が死亡する前に死亡していたり、相続排除などによって相続権を失っていた場合に、相続人となるべき人の子(被相続人の孫)などが代わりに相続することをいいます。

 

例えば、被相続人が死亡する前に被相続人の子が死亡しており、その後に被相続人が死亡したような場合です。この場合は孫が被相続人の遺産を代襲相続することになります。

 

しかし、被相続人が死亡した後に被相続人の子が相続放棄をした場合、被相続人の孫に相続権が移ることはありません。相続放棄をすると、次順位の相続人に相続権が移ります。つまり、第一順位である被相続人の子が相続放棄をした場合、他に被相続人の子がいなければ、第二順位である被相続人の父母に相続権が移ります。

よって、自分が親の財産を相続放棄したからといって、自分の子に相続権が移るわけではありませんので、ご安心ください。

 

親が山林を持っていましたが、相続しても価値がないため相続人全員が相続放棄をしました。どうなりますか?

親が山林を持っていたけれど山奥のため価値がなく、維持の手間もかかるため相続放棄をしたいというケースは比較的多い印象です。こういったケースにおいて相続人全員が相続放棄をした場合、その山林はどうなるのでしょうか。

 

例えば被相続人に配偶者がおらず、被相続人の子全員が相続放棄をした場合、次順位の被相続人の父母に相続権が移ります。父母がすでに亡くなっていたり、相続放棄をすると次順位である兄弟姉妹に相続権が移ります。では、兄弟姉妹も相続放棄をして誰も相続人がいなくなった場合はどうなるのでしょうか。

相続人がいない場合において、被相続人の遺言書もない場合は、利害関係人の請求によって家庭裁判所が相続財産管理人を選任します。相続財産管理人の調査の結果、相続人がおらず、特別縁故者と言われる特別の縁故のあった者もいない場合、最終的には被相続人の遺産は国庫に帰属することになります。

 

親が借金を抱えていたため相続放棄をしました。私に取り立ての連絡は来なくなるのでしょうか?

相続放棄をして家庭裁判所に受理された場合、相続放棄をした人ははじめから相続人ではなかったとみなされます。よって債権者が親の借金を取り立てに来たとしても支払う義務はありません。

 

しかしながら、相続放棄をしたことが債権者に通知されるわけではありませんので、親の死亡後に債権者から催促の通知などが来る場合があります。その場合は相続放棄申述受理通知書を提示して相続放棄をしたことを伝えましょう。

通知書を提示しても催促が来るようでしたら、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

 

まとめ

相続放棄とは何か、相続放棄のメリット・デメリット、相続放棄の手続きの流れなどを解説しました。

 

相続放棄をすれば被相続人の一切の財産を相続することはなくなります。親が借金を抱えていたりした場合は相続放棄をしておくべきでしょう。

 

しかし、相続放棄は相続が開始したことを知った時から3か月以内に行う必要があります。熟慮期間を過ぎてしまうと相続放棄ができなくなってしまいます。

 

また、一度相続放棄をしてしまうと、後から相続放棄を撤回することはできません。相続放棄をした後に、親に莫大な遺産があったことが判明したような場合でも相続放棄を撤回することはできません。

このようなことにならないよう、相続放棄をする場合は被相続人の財産を詳細に調査する必要があります。

 

相続放棄をするに当たって注意すべき点もお伝えしました。相続放棄をしたことが他の相続人に通知されるわけではないため、後々のトラブルとならないよう、他の相続人には相続放棄をしたことを通知しておくべきでしょう。

 

このように相続放棄は様々な問題が発生する可能性があります。安易に相続放棄をしてしまうと後悔することにもなりかねません。相続放棄を検討している場合、まずは弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

尾畠・山室法律事務所では相続放棄に関するお問い合わせを受け付けております。まずはお気軽にお問い合わせ下さい。

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この記事を書いた人

山室 拓也のアバター 山室 拓也 弁護士

日々ご相談を頂く中で法律問題ではない相談に直面することもございます。司法書士、社労士、税理士、弁理士といった士業と連携するにとどまらず、探偵業、不動産業、製造業等を営む方とのネットワークを有することで、法律問題に限らず法律以外の解決策を提示させていただくなど、相談者様に寄り添った解決策を導き出します。

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