知らないと損する国際相続の落とし穴|海外在住でも日本の相続税は逃れられない

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監修

尾畠・山室法律事務所|弁護士による監修記事

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📋 この記事でわかること

  • 国際相続の3つのケースと自分がどれにあたるかの確認方法
  • 「準拠法」とは何か・どの国の法律が適用されるかの判断方法
  • ケース別の手続きの流れと必要書類チェックリスト
  • 海外在住でも日本の相続税が課される仕組みと申告期限
  • よくあるトラブル事例3選と具体的な対策

「親が亡くなったが、自分は海外に住んでいて手続きの方法がわからない」「配偶者が外国籍で、日本の相続手続きに必要な書類が何かわからない」――このような相談が、近年、急速に増えています。

日本に在住する外国籍の方は2023年末時点で約340万人を超えており、また海外に居住する日本人(在留邦人)も約134万人にのぼります(外務省「海外在留邦人数調査統計」)。少子高齢化が進む中、こうした国際的な家族構成を持つ方々が相続を経験するケースは今後ますます増加することが予想されます。

しかし、国際相続は通常の相続と異なる複雑なルールがあります。どの国の法律を適用するかという「準拠法」の問題に始まり、外国語書類の収集・翻訳・認証、相続登記の義務化への対応、二重課税が生じうる相続税の申告まで、専門知識なしに対応するのは非常に困難です。

本記事では、国際相続が発生するケースごとに、手続きの流れ・必要書類・相続税の取り扱い・よくあるトラブルと対策まで、弁護士が徹底解説します。

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目次

1. 国際相続とは?まず自分のケースを確認しよう

国際相続の3つのケース(外国籍・海外在住日本人・海外財産)を示す図解
▲ 国際相続は「外国籍の相続人」「海外在住の日本人」「海外財産の相続」の3ケースに大別される

国際相続とは、相続人または被相続人が外国籍である場合や、相続財産が国外に存在する場合など、国境をまたいで生じる相続のことをいいます。その範囲は広く、以下の3つのケースに大別されます。

ケース 状況の例 主な難しさ
ケース① 外国籍の方が日本国内の遺産を相続する 戸籍謄本の代替書類収集・相続登記
ケース② 海外在住の日本人が日本国内の遺産を相続する 在外公館でのサイン証明取得・代理手続き
ケース③ 日本人が海外の財産(不動産・預金等)を相続する 現地法律の確認・プロベート手続き

⚠️ 複数のケースが重なることもあります。「相続人が外国籍かつ海外在住で、被相続人の遺産が日本と海外の両方にある」といった場合には、準拠法の選定・書類収集・現地手続き・相続税申告のすべてが複合的に絡み合います。早い段階で弁護士に相談することが、スムーズな手続きへの近道です。


2. まず知るべき「準拠法」とは

準拠法のイメージ:日本の法律書と外国の国旗が並ぶ図解
▲ 準拠法とは「どの国の法律で相続を進めるか」を決めるルール。判断を誤ると手続きの全やり直しが生じるリスクがある

国際相続でもっとも重要かつ最初に判断しなければならないのが「準拠法」の問題です。準拠法とは「どの国の法律を使って相続手続きを進めるか」を決めるルールのことで、相続人の範囲・相続分・遺産分割の方法など、相続に関するほぼすべての事項がこれによって決まります。

日本の原則:被相続人の本国法主義

法の適用に関する通則法第36条は、「相続は、被相続人の本国法による」と定めています(本国法主義)。亡くなった方の国籍がある国の法律が、相続全体に適用されるのが原則です。

🇯🇵 被相続人が日本人の場合

相続人が全員外国籍であっても、日本の民法が適用されます。法定相続人の範囲・相続分もすべて日本の規定に従います。

🌏 被相続人が外国籍の場合

原則としてその国の法律が適用されます。例:中国籍なら中国法、韓国籍なら韓国法。

「相続統一主義」と「相続分割主義」の違い

考え方 内容 採用国の例
相続統一主義 すべての財産に一つの法律を統一適用 日本・ドイツ・フランス等
相続分割主義 不動産は財産所在地の法律、それ以外は本国法・住所地法を適用 アメリカ・イギリス・中国等

「反致(はんち)」とは

通則法第41条が定める「反致」とは、外国の法律を準拠法として適用した結果、その外国法自身が「日本法によれ」と指定している場合に、最終的に日本法を適用するというルールです。

📌 反致の具体例

被相続人がアメリカ人で日本に住所を持っていた場合
① 通則法第36条 → まずアメリカ法を準拠法として指定
② アメリカの多くの州では「相続は住所地の法律による」と定める
③ 住所が日本 → 「日本法による」と指定される
④ 結果:反致によって日本法が最終的に適用される

⚠️ 反致が成立するかどうかは被相続人の国籍・住所・財産の所在地などによって異なり、専門家でなければ正確な判断が困難です。準拠法の判断だけでも、弁護士への早期相談が欠かせない理由がここにあります。


3. ケース別の手続きの流れ

ケース①:外国籍の方が日本国内の遺産を相続する場合

外国籍の方がパスポートや日本の書類を準備しているイメージ
▲ 外国籍の相続人は日本の戸籍制度に対応した代替書類の収集が必要になる

外国籍の相続人が日本の遺産を相続する場合でも、被相続人が日本人であれば日本の相続法が適用されます。手続きの流れは日本人同士の相続と基本的に同じですが、書類収集の面で大きな違いが生じます。

ST
1
被相続人の死亡確認・戸籍謄本(除籍謄本)の取得
ST
2
相続人の確定(相続関係証明書類の収集)
ST
3
遺産の調査(不動産・預金・株式・保険等)
ST
4
遺産分割協議(相続人全員が合意した内容を協議書に記載)
ST
5
各種名義変更手続き(相続登記・金融機関手続き等)
ST
6
相続税の申告・納付(10か月以内) ← 期限厳守

外国籍相続人特有の問題:戸籍謄本の代替書類

国の状況 必要な代替書類
戸籍制度がある国(韓国・台湾・中国等) その国の戸籍証明書(日本語訳付き)
戸籍制度がない国(アメリカ・ヨーロッパ等) 出生証明書・婚姻証明書・死亡証明書(公証付き)
書類取得が困難な場合 公証人による宣誓供述書(「私は○○の相続人である」旨を記載)

🚨 2024年4月1日から相続登記が義務化。相続発生と登記に必要な情報を知った日から3年以内に登記申請をしなければ、10万円以下の過料が科される可能性があります。外国籍の相続人がいる場合も例外ではありません。

ケース②:海外在住の日本人が日本の遺産を相続する場合

在外公館(大使館・領事館)のイメージ
▲ 海外在住の日本人は居住国の日本大使館・領事館でサイン証明や在留証明書を取得する

最大の問題は「日本国内の手続きに必要な書類を現地で準備する手間」と「物理的に日本へ帰国できないケース」への対応です。

📝 印鑑証明書の代替:サイン証明(署名証明)

遺産分割協議書には相続人全員の実印と印鑑証明書が必要ですが、海外在住者には日本の印鑑登録がないため取得できません。この場合、居住国の日本大使館・領事館で「サイン証明」を取得することで代替できます。

取得に必要なもの

  • 有効なパスポート
  • 署名が必要な書類(遺産分割協議書の案など)
  • ※国によっては予約が必要で、発行まで数週間かかる場合があります

🏛️ 在留証明書

住民票の代わりとなる現在の海外居住地を証明する書類。不動産の相続登記などに使用。

✍️ サイン証明(署名証明)

印鑑証明書の代替として使用。遺産分割協議書などに署名した際に取得する。

ケース③:日本人が海外の財産を相続する場合

海外の不動産とプロベート手続きのイメージ
▲ アメリカ・イギリス等では裁判所が関与するプロベート(遺産検認手続き)が必要になる場合がある

日本人が海外にある財産(不動産・銀行預金・投資口座・株式等)を相続する場合、日本国内の手続きに加えて、財産所在地の国の手続きも別途必要になります。

⚖️ プロベート(遺産検認手続き)について

アメリカ・カナダ・イギリス・オーストラリアなどの英米法系の国では、裁判所が遺言の有効性を確認し、相続人・遺産管理人を公式に認定する「プロベート」手続きが必要になります。

⏱️

手続き期間

6か月〜
2年以上

💰

費用目安

遺産額の
2〜5%程度

回避できる場合も

生前信託設定・
少額財産など


4. 国際相続の相続税はどうなる?

相続税の申告書と電卓のイメージ
▲ 海外在住でも日本の相続税が課される場合がある。申告期限(10か月)は延長されないため早めの対応が不可欠

🚨 「海外に住んでいるから日本の相続税は関係ない」は大きな誤解です。実際には日本の相続税が課される場合があり、申告漏れによるペナルティを受けるリスクがあります。

課税の判定:無制限納税義務者と制限納税義務者

区分 対象者 課税範囲
居住無制限納税義務者 相続開始時に日本国内に住所がある相続人 国内外のすべての財産
非居住無制限納税義務者
⚠️ 要注意
日本国籍を持ち、相続開始前10年以内に日本に住所があった相続人(海外在住でも対象) 国内外のすべての財産
制限納税義務者 日本国籍を持たず海外在住、かつ被相続人も一定要件を満たす場合 日本国内の財産のみ

外国税額控除:二重課税を回避する仕組み

海外に財産がある場合、現地の相続税・遺産税(Inheritance Tax / Estate Tax)と日本の相続税が二重に課税されるおそれがあります。これを防ぐために「外国税額控除」という制度があります。

外国税額控除の仕組み

現地で納付した税額の一定割合を日本の相続税額から控除することができます。ただし、控除できる金額には上限があり、計算が複雑なため、国際税務に強い税理士への相談が必須です。

申告期限は10か月以内/納税管理人の選任

⏰ 申告・納付期限

被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内。海外在住でも延長されません。

👤 納税管理人の選任

海外在住の場合、日本国内に納税管理人を選任して税務署に届け出る必要があります。税理士への依頼が一般的です。

🚨 申告が遅れると、無申告加算税(最大20%)延滞税が課される可能性があります。書類収集に時間がかかる国際相続では特に、相続発生直後から専門家に相談して動き出すことが重要です。


5. 必要書類チェックリスト

パスポート・出生証明書・書類一式が机に並んだイメージ
▲ 国際相続では通常より多くの書類が必要。収集には数か月かかる場合もあるため早期着手が重要

国際相続では、通常の相続よりも多くの書類が必要になります。以下にケース別の主な必要書類をまとめました。

書類の種類 外国籍の相続人 海外在住の日本人相続人
身分証明 パスポート(有効期限内) パスポート(有効期限内)
相続関係の証明 出生・婚姻証明書(公証付き・日本語訳) 戸籍謄本(本籍地の市区町村で取得)
住所の証明 外国の住所証明書(公証付き) 在留証明書(大使館・領事館で取得)
印鑑・署名の証明 公証人による宣誓供述書 サイン証明(大使館・領事館で取得)
遺産分割協議書 日本語と母国語の対訳版を推奨 日本語版に署名(サイン証明を添付)
相続税申告関連 納税管理人の届出書(必要に応じて) 納税管理人の届出書(必要に応じて)
相続登記(不動産) 外国籍相続人の身分証明書類一式+遺産分割協議書 在留証明書+サイン証明+遺産分割協議書

📌 外国語で作成された書類はすべて日本語の翻訳を添付する必要があります。外国の公文書はアポスティーユ(ハーグ条約加盟国の場合)または在外公館による認証が必要となる場合があります。書類収集には数か月かかる場合もあります。


6. 国際相続でよくあるトラブル事例3選

弁護士が依頼人の相談を受けているイメージ
▲ よくあるトラブル事例はいずれも「早く専門家に相談していれば防げた」ケース

実際の相談事例をもとに、国際相続でよく起こるトラブルをご紹介します。いずれも「早く専門家に相談していれば防げた」ケースです。

事例①

外国の遺言書が日本の銀行口座の解約に使えなかった

📋 状況

海外在住の日本人が現地で作成した外国語の公正証書遺言を残して死亡。相続人が遺言書と日本語訳を持参して日本の銀行に口座解約を申し出たところ、「当行が定める書式・手続きによる対応が必要」として受け付けてもらえなかった。

❌ 原因

外国語の遺言書だけでは対応できないケースが多いのが実態。銀行・法務局の実務では「日本の弁護士による現地法に基づく有効性意見書」や家庭裁判所での検認手続きを求められることがあります。

✅ 対策

海外で遺言書を作成する場合は、日本方式の遺言書(公正証書遺言など)も併せて作成することが最善策。すでに外国語遺言書しかない場合は、弁護士に依頼して有効性意見書を取得した上で手続きを進める必要があります。

事例②

海外在住で相続税の申告期限を過ぎてしまった

📋 状況

アメリカに居住していた日本人が、日本在住の親の相続を受けた。「自分は海外在住だから日本の相続税は関係ない」と思い込み、約1年間放置していたところ、税務署から申告漏れの指摘を受けた。相続税本税に加え、無申告加算税と延滞税を合わせた多額の追加納税を求められた。

❌ 原因

この方は相続開始前10年以内に日本に住所があったため、「非居住無制限納税義務者」に該当し、日本の相続税の課税対象でした。「海外在住=日本の相続税は無関係」という誤解が根本原因です。

✅ 対策

相続が発生したら、居住国にかかわらず、まず日本の相続税の課税要否を専門家に確認することが第一歩。課税対象であれば早急に納税管理人を選任し、申告準備を始める必要があります。

事例③

アメリカの不動産でプロベートに1年以上かかった

📋 状況

日本人の相続人が亡くなった親名義のカリフォルニア州の不動産(評価額約3,000万円)を相続しようとした。現地弁護士に依頼したところ手続き完了まで約1年3か月を要し、弁護士費用は遺産額の約3%、約90万円にのぼった。

❌ 問題点

プロベート手続きが進行中に日本の相続税の申告期限(10か月)が到来してしまい、海外不動産が未分割の状態のまま日本の相続税申告を行わざるを得ず、プロベート完了後に修正申告が必要となる複雑な対応を強いられた。

✅ 対策

海外不動産を含む相続では、相続発生直後から動くことが重要。また、生前から「リビングトラスト(生前信託)」を設定しておくことでプロベートを回避できる場合があります。


7. 国際相続は誰に相談すればいいか

弁護士・税理士・司法書士が連携する専門家チームのイメージ
▲ 国際相続は複数の専門家が関与する。窓口となる専門家が全体を調整するワンストップ体制が理想

国際相続は、法律・書類・税務が複雑に絡み合う分野であり、一人の専門家ですべてに対応できるケースは多くありません。

専門家 主な役割 国際相続での関与場面
弁護士 準拠法の判断・外国法調査・遺産分割協議のサポート・紛争解決・遺言執行 準拠法の確認、外国遺言の有効性意見書作成、遺産分割交渉
司法書士 相続登記(不動産の名義変更)・法務局への申請手続き 日本国内の不動産の相続登記手続き全般
税理士
(国際税務)
相続税の申告・外国税額控除・納税管理人の選任 課税要否の判定、外国税額控除の計算、申告書の作成
現地弁護士 プロベート手続き・現地財産の名義変更 アメリカ・イギリス等の現地手続き

国際相続に強い専門家を選ぶポイント

国際相続・渉外案件の取り扱い実績があるか(ホームページや初回相談で確認)

英語など外国語での対応が可能か、または対応できる専門家と連携しているか

弁護士・税理士・司法書士が連携したワンストップ対応が可能か

初回相談の費用・相談方法(対面・オンライン・電話)を事前に確認できるか

相続税申告・登記・協議書作成まで一貫して対応できるか

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対面・オンラインどちらにも対応しております

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まとめ

本記事では、国際相続の基本から手続きの流れ・相続税・よくあるトラブルと対策まで幅広く解説しました。最後に重要なポイントを整理します。

📌 この記事のまとめ

  • 国際相続では「準拠法(どの国の法律を使うか)」の判断が最初の関門。被相続人が日本人なら相続人が外国籍でも原則として日本法が適用される
  • 「反致」の概念により、準拠法の判断は想定外の結果になることもある。専門家への早期確認が重要
  • 外国籍の相続人は戸籍謄本の代替書類(出生証明書・宣誓供述書等)の準備が必要。取得には時間がかかる
  • 海外在住の日本人も日本の相続税が課される場合があり、申告期限(10か月)は海外在住でも変わらない
  • 相続登記は2024年4月から義務化。相続発生を知った日から3年以内に手続きが必要
  • アメリカ等のプロベート手続きは1年以上かかることもある。生前対策(リビングトラスト等)が有効
  • 書類収集・現地手続きに時間がかかるため、相続発生後は速やかに専門家へ相談

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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的な状況については、必ず専門家にご相談ください。また、法令は改正される場合がありますので、最新情報をご確認ください。記載の情報は2025年時点のものです。

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この記事を書いた人

山室 拓也のアバター 山室 拓也 弁護士

日々ご相談を頂く中で法律問題ではない相談に直面することもございます。司法書士、社労士、税理士、弁理士といった士業と連携するにとどまらず、探偵業、不動産業、製造業等を営む方とのネットワークを有することで、法律問題に限らず法律以外の解決策を提示させていただくなど、相談者様に寄り添った解決策を導き出します。

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