「子供に迷惑かけたくない」なら今すぐ準備!死後事務委任契約で実現する”究極の終活”完全マニュアル

「自分が死んだ後、子供たちにどれだけの負担がかかるか知っていますか?」

総務省の調査によると、親の死後手続きにかかる時間は平均して述べ150時間以上。仕事を休んで役所を回り、銀行で手続きを進め、各種サービスの解約に追われる日々が3ヶ月以上続きます。さらに衝撃的なデータがあります。死後手続きのストレスが原因で、遺族の約4割が体調不良を訴え、2割が精神的な不調により医療機関を受診しているのです。

「子供に迷惑をかけたくない」という親心は、日本人の多くが共有する思いです。しかし、遺言書を書いただけでは死後の手続き負担は減りません。なぜなら遺言書は財産の分配を指定するものであり、葬儀の手配、役所への届出、各種契約の解約といった実務的な手続きには対応できないからです。

死後事務委任契約は、まさに親から子供への最高のプレゼントといえます。自分の死後に必要となる煩雑な手続きを、あらかじめ指定した専門家や信頼できる第三者に委任することで、子供たちの負担を劇的に軽減できるのです。本記事では、死後事務委任契約の仕組みから具体的な活用方法まで、あなたの「究極の終活」を実現するための完全マニュアルをお届けします。

目次

1. 死後事務委任契約とは?基本知識と仕組み

1.1 死後事務委任契約の定義と法的根拠

死後事務委任契約とは、委任者(本人)が生前に、自己の死後の事務処理を受任者に委託する契約です。民法第653条では「委任は委任者の死亡により終了する」と定められていますが、判例により「当事者間の特約により、委任者の死後も契約の効力を存続させることができる」と認められています

平成4年の最高裁判決により、死後事務委任契約の有効性が確立されました。判決では「委任者の死後における事務処理を依頼する旨の委任契約においては、委任者の死亡によっても契約を終了させない旨の合意を含む」と判示され、法的な根拠が明確になったのです。

死後事務委任契約の最大の特徴は、本人の意思を死後も継続して実現できる点にあります。生前に詳細な指示を残すことで、自分の希望通りの葬儀を実施し、大切な人へメッセージを伝え、ペットの世話まで確実に実行してもらえます。

1.2 遺言書・成年後見制度との決定的な違い

死後事務委任契約は、遺言書や成年後見制度とは全く異なる機能を持っています。多くの方が混同しがちですが、それぞれの制度には明確な役割分担があります。

【制度比較表】

制度名対象期間主な機能開始時期費用相場
死後事務委任契約死後葬儀・納骨・行政手続き・遺品整理など死亡時30~100万円
遺言書死後財産の分配指定死亡時5~20万円
成年後見制度生前判断能力低下時の財産管理・身上監護判断能力低下時月2~6万円
任意後見制度生前将来の判断能力低下に備えた契約判断能力低下時月1~5万円

遺言書が「財産をどう分けるか」を定めるのに対し、死後事務委任契約は「死後の手続きを誰がどのように行うか」を定めます。成年後見制度は生前の財産管理と身上監護に特化しており、本人の死亡により終了してしまいます。死後事務委任契約は、まさに死後の空白期間を埋める唯一の制度なのです。

1.3 契約で委任できる15の具体的な事務内容

死後事務委任契約で委任できる事務は多岐にわたります。以下に代表的な15項目を挙げますが、契約内容は自由にカスタマイズできます。

死亡直後の対応として、病院・施設等への駆けつけ、遺体の引き取り、死亡診断書の受領、親族・友人・関係者への連絡があります。葬儀関係では、葬儀社の選定と打ち合わせ、通夜・葬儀の施行、火葬手続きと立ち会い、納骨・散骨・樹木葬などの実施、永代供養の手配が含まれます。

行政手続きとしては、死亡届の提出、年金受給停止手続き、健康保険・介護保険の資格喪失手続き、住民票の除票手続き、各種公共料金の解約・精算があります。さらに遺品整理と住居の片付け、賃貸住宅の明け渡し、デジタル遺産(SNS・メールアカウント)の削除、ペットの引き取り手配、相続人への引き継ぎ事務まで幅広く対応可能です。

2. なぜ今、死後事務委任契約が必要なのか

2.1 核家族化と「死後の空白期間」問題

現代日本では、核家族化の進行により「死後の空白期間」が深刻な問題となっています。総務省統計局のデータによると、65歳以上の単独世帯は2020年時点で約671万世帯に達し、2040年には896万世帯まで増加すると予測されています。

子供が遠方に住んでいる場合、親の死後すぐに駆けつけることが困難です。東京に住む息子が、実家の九州で亡くなった父親の手続きのために、3ヶ月間で12回も飛行機で往復したケースもあります。交通費だけで50万円以上かかり、仕事への影響も甚大でした。

死後72時間以内に行うべき手続きは想像以上に多く、遺体の安置場所の確保、葬儀社との打ち合わせ、死亡届の提出準備、親族への連絡、銀行口座の凍結対応など、判断と行動を迫られる場面が次々と訪れます。精神的ショックを受けている中での対応は、遺族にとって過酷な試練となります。

2.2 デジタル遺産という新たな課題

スマートフォンやパソコンの普及により、デジタル遺産の処理が新たな課題として浮上しています。総務省の調査では、70代のスマートフォン保有率は約60%、インターネット利用率は約51%に達しています。

ネット銀行の口座、証券会社のオンライン口座、暗号資産、電子マネー、サブスクリプションサービス、SNSアカウント、クラウド上の写真や文書など、デジタル資産は多様化しています。パスワードが分からなければアクセスできず、放置すれば月額料金が引き落とされ続けるサービスもあります。

実際に、父親の死後3年経ってから、月額3,980円の動画配信サービスが引き落とされ続けていたことが判明し、総額14万円以上の損失となったケースがありました。死後事務委任契約により、デジタル遺産の一覧とパスワード管理を受任者に託すことで、迅速な解約処理が可能になります。

2.3 実際に起きた3つのトラブル事例

死後事務委任契約がなかったために起きたトラブルを3つご紹介します。

事例1:葬儀をめぐる兄弟間の対立 神奈川県のAさん(享年78歳)は、生前「家族葬でシンプルに」と口頭で伝えていました。しかし長男は「父の交友関係を考えれば一般葬にすべき」と主張し、次男は「父の意思を尊重して家族葬に」と対立。結果的に葬儀が1週間延期され、遺体の保管費用が追加で30万円かかりました。

事例2:賃貸住宅の原状回復トラブル 東京都のBさん(享年82歳)が賃貸マンションで孤独死した後、発見まで2週間が経過。遺品整理と特殊清掃に150万円、原状回復費用に200万円、合計350万円の請求が相続人に届きました。死後事務委任契約があれば、定期的な安否確認と早期発見により、費用を大幅に削減できた可能性があります。

事例3:ペットの行き先問題 千葉県のCさん(享年75歳)は、愛犬2匹と暮らしていました。突然の死により、ペットの引き取り手が見つからず、動物愛護センターに引き渡される寸前に、知人が一時的に預かることに。その後、新しい飼い主を探すのに3ヶ月かかり、その間の飼育費用15万円は知人の負担となりました。

3. 死後事務委任契約で実現できる「究極の終活」

3.1 葬儀・納骨の完全自己決定

死後事務委任契約により、自分の葬儀を完全にプロデュースできます。宗教・宗派の指定から始まり、葬儀の規模(密葬・家族葬・一般葬)、会場の選定、祭壇の花の種類、遺影写真の指定、BGMの選曲、参列者への挨拶文まで、詳細に指示を残せます。

例えば、「葬儀は〇〇葬儀社の家族葬プラン(30名規模)で、祭壇には白いカサブランカを中心に飾り、BGMには私が好きだったビートルズの『Let It Be』を流してください。遺影は昨年の誕生日に撮影した笑顔の写真を使用し、参列者には手紙(別途保管)を配布してください」といった具体的な指示が可能です。

納骨についても、先祖代々の墓、永代供養墓、樹木葬、海洋散骨など、多様な選択肢から自由に選べます。「遺骨の一部を故郷の〇〇寺に納骨し、残りは湘南の海に散骨してください。散骨の際は、家族だけでなく親しい友人5名にも声をかけてください」といった複合的な希望も実現できます。

3.2 行政手続きの一括処理システム

死後に必要な行政手続きは、実に100項目以上に及びます。死後事務委任契約により、専門知識を持つ受任者が一括して処理することで、遺族の負担を大幅に軽減できます。

市区町村役場での手続きだけでも、死亡届提出、火葬許可証取得、住民票除票、印鑑登録廃止、国民健康保険資格喪失、後期高齢者医療資格喪失、介護保険資格喪失、国民年金受給停止など多岐にわたります。

さらに、運転免許証返納、パスポート返納、マイナンバーカード返納、各種会員証解約、クレジットカード解約、携帯電話解約、インターネット回線解約、NHK解約、新聞解約、公共料金(電気・ガス・水道)の停止と精算など、民間サービスの手続きも膨大です。

3.3 デジタル遺産の適切な処理方法

デジタル遺産の処理は、死後事務委任契約の重要な要素です。まず、生前にデジタル資産の棚卸しを行い、アカウント一覧表を作成します。

オンラインバンキング(みずほダイレクト、三菱UFJダイレクト等)、ネット証券(SBI証券、楽天証券等)、暗号資産取引所(bitFlyer、Coincheck等)などの金融系サービスは、相続財産として適切に処理する必要があります。

SNSアカウント(Facebook、Instagram、Twitter、LINE等)については、追悼アカウント化、アカウント削除、データダウンロード後削除など、サービスごとに対応方法が異なります。Googleアカウントの「アカウント無効化管理ツール」、Facebookの「追悼アカウント管理人」など、各社が提供する事前設定機能も活用できます。

3.4 ペットの引き取り先確保

ペットは家族の一員でありながら、法律上は「物」として扱われるため、遺言書では十分な対応ができません。死後事務委任契約により、ペットの将来を確実に保障できます。

契約書には、新しい飼い主の指定(第1候補、第2候補)、飼育費用の準備(ペット信託との併用)、かかりつけ動物病院の情報、好きな食べ物やアレルギー情報、性格や癖の詳細な説明を記載します。

実際の例として、「愛猫ミミ(メス、5歳、避妊済み)は、姪の〇〇さんに引き取ってもらう。飼育費用として100万円を別途用意し、月3万円を上限に必要経費を支払う。かかりつけは〇〇動物病院で、腎臓の数値に注意が必要。おやつはささみジャーキーが好物だが、1日2本まで」といった詳細な指示を残すことができます。

3.5 遺品整理とメッセージの伝達

遺品整理は、単なる片付けではなく、故人の思い出を整理し、次世代に引き継ぐ大切な作業です。死後事務委任契約により、計画的で心のこもった遺品整理を実現できます。

【遺品整理チェックリスト】

項目処理方法具体例注意点
形見分け品指定者への配布腕時計→長男、着物→長女、万年筆→孫リストと保管場所を明確に
思い出の品写真撮影後処分アルバム、手紙、日記帳デジタル化の検討
価値ある物品査定・売却骨董品、美術品、貴金属専門業者による適正査定
日用品寄付・リサイクル衣類、家電、家具状態の良いものを選別
個人情報含む書類シュレッダー処分通帳、契約書、明細書情報漏洩防止の徹底

メッセージの伝達も重要な要素です。家族への感謝の手紙、友人への最後の挨拶、孫への人生のアドバイスなど、死後事務委任契約により確実に届けることができます。

4. 契約締結までの具体的な5ステップ

4.1 信頼できる受任者の選び方

受任者選びは、死後事務委任契約の成否を左右する最重要ポイントです。選択肢としては、親族、友人・知人、専門職(弁護士・司法書士・行政書士)、法人(NPO法人、一般社団法人)があります。

親族を選ぶ場合、信頼関係は強固ですが、感情的な負担が大きくなる可能性があります。また、相続人である親族が受任者となる場合、他の相続人から「利益相反ではないか」と疑念を持たれるリスクもあります。

専門職を選ぶ場合、確実な事務処理が期待できますが、費用が高額になる傾向があります。弁護士の場合、着手金30万円、執行報酬50万円、実費精算という料金体系が一般的です。司法書士や行政書士は、弁護士より安価ですが、対応できる業務範囲に制限があります。

最近では、死後事務を専門とするNPO法人や一般社団法人も増えています。専門性と費用のバランスが良く、組織として対応するため、受任者の病気や死亡リスクも回避できます。

4.2 必要書類の準備リスト

死後事務委任契約の締結には、以下の書類を準備する必要があります。

本人確認書類として、運転免許証またはマイナンバーカード、印鑑登録証明書(3ヶ月以内)、実印が必要です。財産関係書類では、不動産登記簿謄本、預金通帳のコピー、生命保険証券のコピー、年金手帳または年金証書を用意します。

その他の重要書類として、戸籍謄本(本籍地記載)、住民票の写し、緊急連絡先一覧(家族・親族・友人)、かかりつけ医療機関の情報、希望する葬儀・納骨の詳細資料、デジタル資産のID・パスワード一覧(封印して保管)も準備します。

書類の準備には1~2週間かかることが多いため、余裕を持って進めることが大切です。特に戸籍謄本は本籍地でしか取得できないため、遠方の場合は郵送請求となります。

4.3 公正証書での契約作成

死後事務委任契約は、必ずしも公正証書である必要はありませんが、確実性と信頼性の観点から公正証書での作成を強く推奨します。

公証役場での手続きは、事前相談(無料)、必要書類の提出、公証人による内容確認、作成日の予約、当日の読み合わせと署名という流れで進みます。公証人手数料は、目的財産の価額により異なりますが、一般的に3~5万円程度です。

公正証書のメリットは、公証人が内容の適法性を確認するため無効になるリスクが低い、原本が公証役場に保管されるため紛失の心配がない、遺言書と同じ扱いで相続人も内容を確認できる、裁判での証拠能力が高いという点にあります。

4.4 預託金の設定と管理方法

死後事務の執行には費用がかかるため、あらかじめ預託金を準備する必要があります。預託金の額は、葬儀費用、納骨費用、遺品整理費用、受任者報酬、その他実費の合計で算出します。

一般的な預託金の目安は、葬儀費用100~200万円、納骨費用20~50万円、遺品整理費用30~100万円、受任者報酬30~50万円、予備費20~30万円で、総額200~400万円程度となります。

預託金の管理方法には、信託銀行の遺言代用信託(月額管理料1,000円程度)、専用口座での分別管理(受任者名義だが使途限定)、生命保険の活用(受任者を受取人に指定)という選択肢があります。最も安全なのは信託銀行の利用ですが、費用と利便性を考慮して選択します。

4.5 定期的な見直しポイント

死後事務委任契約は、一度作成したら終わりではなく、定期的な見直しが必要です。見直しのタイミングは、年1回の定期見直し、家族構成の変化時(結婚、離婚、出産、死別)、健康状態の変化時、引っ越しや施設入所時、受任者の状況変化時です。

見直しの際には、連絡先情報の更新(住所、電話番号、メールアドレス)、財産状況の変化確認、デジタル資産の追加・削除、葬儀・納骨希望の再確認、預託金額の妥当性検証を行います。

特に重要なのが、受任者との定期的なコミュニケーションです。年に1~2回は面談し、お互いの状況を確認し合うことで、いざという時にスムーズな執行が可能になります。

5. 費用相場と賢い節約術

5.1 専門家別の費用比較表

死後事務委任契約の費用は、依頼する専門家により大きく異なります。以下に詳細な比較を示します。

【専門家別費用比較】

専門家契約書作成費用執行報酬メリットデメリット
弁護士20~50万円50~100万円法的トラブル対応可、権限が広い費用が高額、敷居が高い
司法書士10~30万円30~50万円不動産手続きに強い、費用が中程度訴訟代理権なし
行政書士5~20万円20~40万円費用が安い、相談しやすい権限に制限あり
NPO法人3~15万円30~50万円専門性高い、組織対応で安心地域限定の場合あり

5.2 公正証書作成費用の内訳

公正証書作成にかかる費用の内訳を詳しく見ていきます。公証人手数料は、目的財産が100万円未満で5,000円、100万円~200万円で7,000円、200万円~500万円で11,000円、500万円~1,000万円で17,000円となっています。

その他の費用として、正本・謄本交付手数料(1枚250円×枚数)、証人立会い費用(1人5,000~10,000円×2名)、交通費・日当(出張の場合)がかかります。総額で3~5万円程度を見込んでおく必要があります。

5.3 預託金の適正額算出方法

預託金の適正額は、地域や希望内容により大きく変動します。東京都心部では、葬儀費用150万円、納骨費用30万円、遺品整理50万円、受任者報酬50万円、予備費20万円の計300万円が標準的です。

地方都市では、葬儀費用100万円、納骨費用20万円、遺品整理30万円、受任者報酬30万円、予備費20万円の計200万円程度で対応可能な場合が多いです。

預託金を抑える工夫として、葬儀を直葬や家族葬にする(50~100万円削減)、市営・公営の納骨堂を利用する(10~30万円削減)、生前整理で遺品を減らしておく(20~50万円削減)という方法があります。

5.4 費用を抑える3つの工夫

死後事務委任契約の費用を抑える工夫を3つご紹介します。

第一に、パッケージプランの活用です。最近では、葬儀社や石材店が死後事務委任契約をセットにしたプランを提供しています。個別に依頼するより20~30%程度安くなる場合があります。

第二に、部分委任の検討です。すべての事務を委任するのではなく、特に重要な部分(葬儀の施行、行政手続き)のみを委任し、遺品整理などは家族で対応することで、費用を半額程度に抑えられます。

第三に、相見積もりの取得です。3社以上から見積もりを取ることで、適正価格を把握でき、価格交渉の材料にもなります。ただし、安さだけでなく、信頼性や実績も重視することが大切です。

6. よくある質問と注意点

6.1 認知症になった後でも契約できるか

認知症と診断された後の契約締結は、判断能力の程度により可否が分かれます。軽度認知症で、契約内容を理解できる状態であれば、医師の診断書を添付することで契約可能な場合があります。

しかし、中等度以上の認知症では、契約締結は困難です。判断能力が不十分な状態での契約は、後に無効と判断されるリスクが高いためです。認知症の疑いがある場合は、早急に専門医の診断を受け、軽度のうちに契約を締結することが重要です。

認知症対策としては、家族信託入門 資産凍結を防ぎ老後の安心を確保する方法家族信託だけでは不十分 認知症になったら医療・介護契約ができない理由と任意後見制度の必要性も併せて検討することをお勧めします。

6.2 受任者が先に亡くなった場合の対処法

受任者が委任者より先に亡くなるリスクは、常に存在します。対処法として、契約書に予備的受任者を指定しておく方法があります。「受任者〇〇が死亡または辞任した場合は、△△を受任者とする」という条項を入れることで、自動的に引き継ぎが行われます。

法人を受任者とする場合、組織として対応するため、個人の死亡リスクを回避できます。NPO法人や一般社団法人であれば、担当者が変わっても組織として責任を持って執行してくれます。

定期的な見直しも重要です。年1回は受任者と面談し、健康状態を確認します。受任者が70歳を超えた場合は、より若い予備的受任者の指定を検討すべきです。

6.3 途中解約と変更の可能性

死後事務委任契約は、委任者が生存中であれば、いつでも解約や変更が可能です。ただし、公正証書で作成した場合は、解約も公正証書で行う必要があり、手数料(11,000円程度)がかかります。

変更の内容により、手続きの複雑さが異なります。連絡先の変更など軽微な変更は、覚書で対応可能です。一方、受任者の変更や委任事務の大幅な変更は、契約書の作り直しが必要になります。

解約の際は、預託金の返還方法を明確にしておくことが重要です。信託銀行を利用している場合は、所定の手続きにより返還されますが、受任者が管理している場合は、返還に時間がかかることがあります。

6.4 相続人との関係性

死後事務委任契約と相続人の関係は、しばしばトラブルの原因となります。相続人には、死後事務委任契約の存在と内容を事前に説明しておくことが重要です。

特に注意すべきは、相続財産と死後事務費用の区別です。預託金は死後事務の執行のためのもので、相続財産ではないことを明確にしておく必要があります。契約書にも「本預託金は、委任事務の処理に充てるものであり、相続財産には含まれない」と明記します。

相続人の一人を受任者とする場合、他の相続人から不信感を持たれる可能性があります。執行内容の報告書を全相続人に送付する、領収書をすべて保管する、第三者の立会いを求めるなどの透明性確保が必要です。

7. 他の終活制度との併用で完璧な準備を

7.1 遺言書との併用メリット

死後事務委任契約と遺言書は、互いに補完し合う関係にあります。意外と知らない「遺産」とは?知っておくべき基礎知識から実践的な対処法まで完全解説でも詳しく解説されていますが、遺言書は財産の分配を、死後事務委任契約は手続きの実行を担います。

両制度を併用することで、財産分配の明確化と手続きの確実な実行が実現します。例えば、遺言書で「自宅は長男に相続させる」と指定し、死後事務委任契約で「相続登記手続きは受任者が長男に協力して行う」と定めることで、スムーズな相続が可能になります。

遺言執行者と死後事務受任者を同一人物にすることで、一貫性のある対応が期待できます。ただし、業務負担が大きくなるため、報酬設定には注意が必要です。

7.2 任意後見制度との組み合わせ

任意後見制度は、判断能力が低下した際の生前の財産管理と身上監護を担う制度です。死後事務委任契約と組み合わせることで、判断能力低下から死後まで切れ目のないサポートが実現します。

移行型の活用により、元気なうちは見守り契約、判断能力が低下したら任意後見契約、死亡後は死後事務委任契約という3段階のサポート体制を構築できます。同一の受任者(受託者)とすることで、本人の意思や希望を一貫して実現できます。

家族信託だけでは不十分 認知症になったら医療・介護契約ができない理由と任意後見制度の必要性で解説されているように、財産管理だけでなく身上監護も重要な要素です。

7.3 家族信託との使い分け

家族信託は、財産管理に特化した柔軟性の高い制度です。遺産相続の流れを解説 手続きから注意点まで完全ガイドにもあるように、不動産や金融資産の管理には家族信託が有効ですが、死後の事務処理はカバーできません。

家族信託で財産管理を行い、死後事務委任契約で葬儀や手続きを委任するという使い分けが理想的です。信託財産から死後事務費用を支出する仕組みを作ることで、資金面での連携も可能になります。

受託者と受任者の連携も重要です。生前は信託受託者が財産管理を行い、死後は死後事務受任者に引き継ぐという流れを、契約書に明記しておきます。

7.4 エンディングノートの活用

エンディングノートは法的拘束力はありませんが、死後事務委任契約を補完する重要なツールです。契約書に書ききれない細かな希望や、家族へのメッセージを残すことができます。

エンディングノートに記載すべき内容は、自分史(生い立ち、学歴、職歴、趣味)、家族へのメッセージ、友人・知人の連絡先、思い出の場所や品物、好きだった音楽や映画、人生の教訓やアドバイスなどです。

デジタル版エンディングノートも増えています。パスワード管理機能、定期更新リマインダー、家族との共有機能などがあり、常に最新の情報を保てます。ただし、アクセス方法は確実に家族に伝えておく必要があります。

まとめ:今すぐ始める死後事務委任契約

死後事務委任契約の準備を始めるベストタイミングは「今」です。多くの方が「まだ早い」と考えがちですが、65歳を過ぎたら真剣に検討すべき時期といえます。

準備開始の目安は、65歳:検討開始、情報収集、70歳:具体的な準備、専門家への相談、75歳:契約締結の期限と考えてください。健康状態に不安がある場合は、年齢に関わらず早めの対応が必要です。

無料相談窓口も充実しています。各地の弁護士会、司法書士会、行政書士会では、定期的に無料相談会を開催しています。市区町村の高齢者相談窓口、地域包括支援センター、社会福祉協議会でも相談を受け付けています。最近では、オンライン相談に対応する専門家も増えており、遠方でも気軽に相談できます。

今すぐできる準備チェックリストを活用してください。財産の棚卸し(不動産、預貯金、有価証券、保険)、デジタル資産の整理(ID、パスワード一覧作成)、希望する葬儀・納骨方法の検討、エンディングノート作成、家族との話し合い、専門家への相談予約、これらを一つずつ進めていきます。

家族への伝え方も大切です。「迷惑をかけたくないから準備している」というポジティブなメッセージで伝えます。家族会議を開き、全員で情報を共有することで、理解と協力を得やすくなります。準備の進捗を定期的に報告し、意見を聞くことも重要です。

死後事務委任契約は、決して縁起の悪い話ではありません。むしろ、家族への愛情の証であり、自分らしい最期を迎えるための積極的な選択です。残される家族の負担を軽減し、自分の意思を確実に実現するために、今日から一歩を踏み出してみませんか。

あなたの「子供に迷惑をかけたくない」という思いは、必ず実現できます。死後事務委任契約という強力なツールを活用して、究極の終活を完成させてください。専門家のサポートを受けながら、一つずつ準備を進めていけば、必ず安心できる体制が整います。

最後に、死後事務委任契約は一度作成したら終わりではありません。定期的な見直しと更新により、常に最新の状態を保つことが大切です。家族構成の変化、健康状態の変化、法制度の改正などに応じて、柔軟に対応していきます。

人生の最期まで自分らしく、そして家族に優しく。死後事務委任契約は、そんなあなたの願いを叶える最良の選択肢なのです。

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この記事を書いた人

山室 拓也のアバター 山室 拓也 弁護士

日々ご相談を頂く中で法律問題ではない相談に直面することもございます。司法書士、社労士、税理士、弁理士といった士業と連携するにとどまらず、探偵業、不動産業、製造業等を営む方とのネットワークを有することで、法律問題に限らず法律以外の解決策を提示させていただくなど、相談者様に寄り添った解決策を導き出します。

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