遺言書作成のメリット・デメリットとは?現役弁護士が徹底解説!

遺言書作成のメリット・デメリットとは?現役弁護士が徹底解説!

遺言をしておけば、配偶者や子どもに希望通りの遺産を遺すことができることは多くの方がご存じのことでしょう。

しかし、具体的にどうやって遺言書を作成すればよいのかや、遺言書を作成するメリット・デメリットについてはよく知らないという方も多いと思います。

そこで本記事では、そもそも遺言や遺言書とは何か、遺言書の種類、遺言書を作成することのメリット・デメリットについて、現役弁護士が徹底解説します。

目次

遺言とは?

まずはそもそも遺言とは何かについて解説したいと思います。遺言とは一般的には「ゆいごん」と呼ばれ、自分が死んだ後に自分の財産をどうやって分配するか等を意思表示することをいいます。

例えば、「遺言者は、相続開始時に有する次の財産を、遺言者の妻に相続させる。」のように書きます。

 

なお、法律的には「いごん」が正しい読み方とされています。

 

遺言書とは?

「遺言書」とは、遺言を決まった形式に則って書き記した書面をいいます。遺言書を必ず書かなければならないわけではありませんが、遺言書を書くと被相続人の意思が尊重されるため、原則としてその内容に沿って財産の分割が行われます。

なお、遺言書は法律によって決まった形式に沿って記載しないと効力を生じません。

 

似たような言葉として「遺書」がありますが、遺書と遺言書は似て非なるものです。遺書は死にゆく際の自らの気持ちを記したものであり、法的な効力を持ちません。

これに対し遺言書は、自分の財産をどうやって分配するか等の意思表示が示されたものであり、法的な効力を持ちます。

 

遺言書に書く内容

遺言書は自分の財産をどうやって分配するか等を意思表示した書面をいいますが、どうやって遺言書を書けばよいのでしょうか。

遺言者 〇田太郎氏は、配偶者である〇田花子氏と、息子である〇田次郎氏、娘である〇田花美氏の四人家族であるとします。〇田太郎氏は、〇〇銀行口座の預金と、土地および建物の財産を有しているとします。

この場合において、遺言書に書くべき内容を具体的に説明します。

遺言書の記載例

土地および建物については配偶者である〇田花子氏へ、銀行口座の預金については2人の子どもに半分ずつ相続させたい場合の遺言書の記載例は、以下のとおりです。

 

遺言書

 

遺言者 〇田太郎は、本遺言書により以下のとおり遺言する。

1.妻 〇田花子(昭和〇〇年〇月〇日生)に次の財産を取得させる。

 

(1) 土地

   所在 東京都〇〇区✖✖町

   地番 1番地1

   地目 宅地

   地積 100平方メートル

(2) 建物

   所在   東京都〇〇区✖✖町1番地1

   家屋番号 〇〇番〇〇

   種類   居宅

   構造   木造瓦葺2階建て

   床面積  1階〇〇平方メートル

        2階✖✖平方メートル

 

2.遺言者は、遺言者の有する次の預貯金を、遺言者の長男 〇田次郎(昭和〇〇年〇月〇日生)、長女 〇田花美(昭和〇〇年〇月〇日生)に2分の1の割合で相続させる。

  〇〇銀行 ✖✖支店 普通 〇〇〇〇〇〇〇

 

3.上記にない財産については、すべて妻 〇田花子に相続させる。

 

4.遺言者は、この遺言の執行者として以下の者を指定する。

  東京都〇〇区✖✖町2番地2

  〇〇法律事務所

  弁護士 〇山一郎

 

令和〇年〇月〇日

東京都〇〇区✖✖町1番地1

遺言者 〇田太郎 ㊞

 

分配する財産を明確に記載する

例えば土地や建物であれば記載例のように所在、地番、地目などを正確に記載します。銀行預金であれば銀行名、支店、預金種別、口座番号を正確に記載します。

明確に記載しないと対象財産が不明確となり、後々の争いの種になります。

 

また、財産を相続人に相続させる場合には、「相続させる」と記載します。一方で、相続人以外に財産を分配したい場合には、「遺贈する」と記載します。

 

誰に財産を分配するのかを明確に記載する

対象財産を誰に分配するのかを戸籍どおりのフルネームで明確に記載します。同姓同名の可能性を排除するために、生年月日も記載しておくとよいでしょう。続柄についても記載しておくのが望ましいといえます。

 

遺言執行者を記載する

遺言執行者とは、遺言者の意思を実現するために、遺言の内容を執行する者をいいます。遺言どおりに土地や建物の名義を変更したり、預金名義を変更したりします。

 

遺言書において遺言執行者を必ず指定しなければならないわけではありませんが、遺言者の死後にスムーズに遺言を執行するために選任しておくのが望ましいでしょう。

日付を記載し、署名捺印する

遺言書には遺言を作成した日付と遺言者の氏名を記載し、遺言者の印鑑を捺印します。これらは遺言書の必須の記載要件であり、記載されていない場合やあいまいな記載の場合は遺言書が無効となってしまいます。よって、正確に記載するようにしましょう。

例えば、略字での氏名や、〇月吉日などの日付はあいまいな記載となることから避けるべきです。

 

また、日付を正確に記載し、署名捺印をしたとしても、長期間の保存によりインクが薄れたりして判読不可能になってしまう場合があります。そうなってしまうと記載がないものとして取り扱われ、遺言書が無効となるリスクがありますので、ペンや朱肉は消えにくいものを選ぶようにしましょう。

遺言書の種類

遺言書には大きく「普通方式遺言」と「特別方式遺言」の2種類に分けられます。

通常用いられるのは「普通方式遺言」であり、大きく分けて「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」の3種類があります。以下では「普通方式遺言の3種類について詳しく解説した上で、あまり用いられない「特別方式遺言」についても簡単に説明します。

普通方式遺言

通常の場合で用いられるほとんどの遺言は普通方式遺言です。その中でも「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」はよく用いられます。

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、その名の通り自筆で遺言を書き記す方法です。思い立ったときに一人で遺言を作成することができるため、簡単に遺言を作成したい人に向いています。

ただし、法律で決められた要件があり、これらを守らないで遺言を書くと無効になります。以下では、自筆証書遺言が認められるための4つの要件をそれぞれ説明します。

 

  • 手書きで書くこと

自筆証書遺言は決まった紙に書く必要はないですし、ペンの種類も決められていません。ノートの切れ端に書いても問題ありません。

もっとも、すべて手書きで書く必要があります。パソコンで作成した遺言、録音や録画で収録した遺言、代筆による遺言は認められません。

ただし、財産目録など一部分についてはパソコンで作成してもよいことになりました。

 

  • 氏名を戸籍どおりに正確に書くこと

自筆証書遺言は、戸籍どおりの氏名を正確に書かなければなりません。遺言を書いた人物を特定するためです。苗字のみ、名前のみは認められません。

また、住所については必須ではありませんが、遺言を書いた当時の住所を記載しておいたほうがより正確です。

 

  • 押印すること

押印の場所は問われませんが、遺言書に押印が必要です。自筆の氏名の横に押印するのが一般的です。

印鑑については実印であることまでは求められていませんので、認め印でも効力は生じますが、正確性を期すために実印による押印が望ましいでしょう。

 

  • 作成した日付を書くこと

自筆証書遺言を作成したら、作成した日付を記載しなければなりません。遺言は新しいものが古いものに優先して上書きされるため、日付がわからないとどれが新しい遺言かわからなくなるためです。

よく「○月吉日」のような記載を見ますが、正確な日付ではないため無効となります。

 

公正証書遺言

公正証書遺言とは、公正証書によって作成された遺言書のことです。

具体的には、2人以上の証人が見ている前で、公証人がパソコンで作成した遺言書を、記載された内容で間違いないかどうかを本人が確認し、最後に署名捺印をして完成させた書面をいいます。

公証人は、元裁判官や元検察官などの法律家を長年勤めた方がなるケースが多く、法律実務に精通しています。

 

公正証書遺言は公証人が作成するため、自筆証書遺言のように要件を満たすかどうかを本人が気を付ける必要はありません。ただし、公正証書遺言を作成するためには公証役場へ行くなど手続きが必要であるため、以下では公正証書遺言を作成するための手順を説明します。

 

  • どのような財産があるか、誰に財産を相続させるかなどをまとめる

まずは本人自身でどのような財産があるか、誰に財産を相続させるかなどをメモしてまとめておきます。メモの段階では自筆証書遺言のように要件があるわけではありませんので、公証人がわかる程度にまとめておけば大丈夫です。

 

  • 公証役場で公証人と相談する

メモがまとまったら、公証役場に電話をして公証人との相談の日時を予約します。公証人との相談では、作成したメモをもとに公証人に希望を伝えます。公証人から必要書類などの指示がありますので、これに従って書類を収集します。

 

  • 公証人、証人、遺言者で内容を確認する

公証人との相談により遺言の内容が決まったら、これを公正証書遺言として完成させるために、公証人、2人以上の証人、遺言者で確認する場を設けます。

証人は知人でかまいませんが、推定相続人や受遺者など、被相続人から財産をもらう立場の人はなることができません。その他にも未成年はなれないなどの制限があります。

ふさわしい証人がいない場合、公証役場に依頼することもできます。その場合は証人に対する謝礼が必要で、相場は6,000円~10,000円程度です。

 

秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、遺言の内容を秘密にしつつ、公証人および2人以上の証人に、遺言の存在を証明してもらう遺言書のことです。

遺言の内容を本人以外に秘密にしておくことができるのが特徴で、自筆証書遺言のように発見されないというリスクを防ぐことができます。

 

ただし、秘密証書遺言は手続きが煩雑な割に無効になるリスクが大きく、自筆証書遺言や公正証書遺言に比べて利用件数が圧倒的に少なくなっています。

 

以下では、秘密証書遺言を作成するための手順を説明します。

 

  • 遺言書を書く

遺言の内容が決まったら、その内容を記載した遺言書を作成します。秘密証書遺言の場合、手書きである必要はありません。パソコンで作成しても大丈夫です。その他は自筆証書遺言と同様に作成します。

 

  • 遺言書を封筒に入れ、封をして押印する

遺言書の作成が完了したらそれを封筒に入れて封をし、遺言書に押印した印鑑と同一の印鑑で封をした部分に押印します。同一の印鑑でない場合、無効になりますので注意が必要です。

 

  • 遺言者と2人以上の証人が署名捺印する

封をした遺言書を2人以上の証人とともに公証役場へ持参します。公証人は、遺言書を提出した日付と遺言をした本人の氏名を封紙に記入します。その封紙に、遺言をした本人と証人2人が署名捺印します。

特別方式遺言

特別方式遺言とは、死期が突然迫ってきたときに書く遺言のことをいいます。普通方式遺言は遺言書を完成させるのに十分な時間があるのに対し、特別方式遺言は死期が突然迫ったときに書くため、遺言書を書く時間が非常に短いことが特徴です。

 

特別方式遺言には大きく分けて「危急時遺言」と「隔絶地遺言」の2種類があります。それぞれはさらに2種類に分かれるため、合計4種類の特別方式遺言があります。

以下ではその4書類について簡単に説明します。

 

危急時遺言

危急時遺言とは、病気や怪我、あるいは船舶や飛行機により死期が突然迫ってきたときに書く遺言をいいます。

 

  • 一般危急時遺言

一般危急時遺言は、病気や怪我により死期が迫ってきた場合に書く遺言です。本人が怪我などの影響により遺言を作成できなければ代筆も可能です。一般危急時遺言を作成するためには、3人以上の証人の立ち合いが必要となります。

 

一般危急時遺言の作成後、20日以内に家庭裁判所で確認手続きを受けなければなりません。20日以内に家庭裁判所での確認手続きを受けないと遺言は無効となります。

 

  • 特別危急時遺言

特別危急時遺言は、船舶や飛行機の事故などに遭い死期が迫ってきた場合に書く遺言です。一般危急時遺言と同様、代筆が可能です。こちらは2人以上の証人の立ち合いが必要となります。

船舶や飛行機の事故に遭った場合に証人を2人立てるのは極めて困難であることから、特別危急時遺言を作成することはほぼ不可能であると思われますが制度としては存在します。

 

特別危急時遺言も家庭裁判所の確認手続きが必要ですが、遺言作成後20日以内という制限はありません。

隔絶地遺言

隔絶地遺言とは、伝染病での隔離や船舶に乗船中などの理由により隔絶された状況において作成する遺言をいいます。

 

  • 一般隔絶地遺言

伝染病などで隔離されているような場合に書く遺言です。危急時遺言と異なり、代筆はできず、本人が自筆する必要があります。

警察官1人と証人1人の立ち合いが必要となります。遺言書には本人のほか、警察官と証人の署名捺印が必要です。

危急時遺言と異なり、本人が自筆しているため、家庭裁判所の確認手続きは不要です。

 

  • 船舶隔絶地遺言

船舶に乗船していることにより、長期間陸地から隔離されているような場合に書く遺言です。特別危急時遺言とは異なり、飛行機は含まれません。こちらも一般隔絶地遺言と同様、本人が自筆する必要があります。

船長または事務員1人と証人2人以上の立ち合いが必要となります。遺言書には本人のほか、船長または事務員と証人の署名捺印が必要です。

一般隔絶地遺言と同様、こちらも本人が自筆しているため、家庭裁判所の確認手続きは不要です。

遺言書の種類ごとのメリット・デメリット

ここでは、普通方式遺言の3つについて、それぞれのメリット・デメリットを解説します。なお、特別方式遺言については緊急時の特別な遺言であるため、メリット・デメリットの解説は不要であると考えますので、普通方式遺言に絞って解説します。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、公正証書遺言と並んでよく利用される遺言方式です。

メリット

自筆証書遺言のメリットは主に以下のとおりです。

 

  • いつでも思い立ったときに書くことができる

自筆証書遺言は、公正証書遺言のように公証役場へ行く必要がありません。遺言書を書きたいと思い立ったときに書くことができるため、煩雑な手続きが不要です。

 

  • 手数料や手間がかからない

自筆証書遺言は一人で作成することができるため、証人や公証人に支払う手数料や謝礼などは必要ありません。費用をかけたくない方にとっては大きなメリットでしょう。

 

また、自筆証書遺言は公証役場へ持っていったり、戸籍謄本を取得するなどの手続きも必要ありません。一人で作成が完結しますので、手間がかからない点もメリットです。

 

  • 訂正、加入、削除が簡単にできる

遺言書を作成した後に訂正、加入、削除がしたくなった場合、自筆証書遺言であれば簡単に行うことができます。

公正証書遺言の場合、公正証書にしてしまっているため、訂正したいと思っても容易ではありません。再度作成しなおす場合はさらに費用がかかります。

一方、自筆証書遺言であれば訂正する場合も作成しなおす場合も費用はかかりません。

デメリット

自筆証書遺言のデメリットは主に以下のとおりです。

 

  • 無効になるリスクがある

自筆証書遺言の作成には法律で決められた要件があり、これらを守らないで遺言を書くと無効になります。手軽に書くことができる故に要件を守らないで書いてしまう場合や、自分では要件を守ったつもりが実は守られていないケースも多く、公正証書遺言に比べて無効になるリスクが高いといえます。

 

  • 見つけられないリスクや隠匿されるリスクがある

自筆証書遺言は証人や公証人が不要であるため一人で作成できる点がメリットですが、それは同時にデメリットでもあります。

自筆証書遺言を書いてもその存在を誰かに知らせなければ、死亡後に遺言書を見つけてもらえないリスクがあります。また、遺言書が見つかると不利になる相続人が遺言書を隠匿してしまう可能性もあります。そうなると遺言書はなかったものとして扱われ、法定相続分に従って相続がされてしまうことになります。

 

なお、見つけられないリスクや隠匿されるリスクについては、「自筆証書遺言書保管制度」を活用することによりそのリスクを低減できるようになりました。

自筆証書遺言書保管制度とは、2020年7月10日より開始された新しい制度で、法務局が遺言書を保管してくれる制度です。

この制度を利用すれば、法務局が遺言書を保管してくれるため、見つけられないリスクなどを回避することができます。

 

  • 改ざんのリスクがある

自筆証書遺言は簡単に訂正、加入、削除ができることがメリットですが、同時にデメリットにもなります。つまり、簡単に訂正、加入、削除ができるということは、第三者による改ざんも容易にできてしまうということにもつながるのです。

もちろん、訂正、加入、削除にあたっては本人による自筆と押印が必要ですが、本人の印鑑を勝手に持ち出し、筆跡に似せた訂正等がなされる可能性があります。

また、本人が騙されたり脅されたりして訂正をしても、遺言書の書面上からはそのことをうかがい知ることはできません。

 

なお、自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、改ざんのリスクについても回避することができます。

 

  • 家庭裁判所の検認手続きが必要

自筆証書遺言は公正証書遺言と異なり、公証人が内容を確認しているわけではありません。よって、遺言が有効に成立しているか否かを家庭裁判所に検認してもらう必要があります。

 

公正証書遺言

公正証書遺言は、公正証書として作成する遺言書であり、信頼性が高い遺言書の方式です。

 

メリット

公正証書遺言のメリットは以下のとおりです。

 

  • 記載不備によって無効になることがない

公正証書遺言は、法律のプロである公証人が遺言者の希望に沿って遺言書を作成します。よって、形式面で無効になることがありません。

自筆証書遺言は、自筆で書くため無効になる可能性がありますし、長期間の保管によりボールペンのインクが飛んでしまったり、押印が薄くなってしまった結果、無効になるリスクもあります。

公正証書遺言ではこういったリスクがないのがメリットです。

 

  • 見つけられないリスクや隠匿されるリスクがない

公正証書遺言は、公証人と2人以上の証人の立ち合いが必要となり、確認後に公証役場で原本が保管されます。よって、遺言書は本人以外に確認されており、見つけられないリスクや隠匿されるリスクはありません。

 

  • 改ざんされるリスクがない

公正証書遺言は、公証人と2人以上の証人の立ち合いのもと、署名捺印がされ公証役場に保管されます。いったん公正証書が作成されると、自筆証書遺言のように簡単に訂正することができません。内容を変更する場合は新たに公正証書遺言または自筆証書遺言を作成する必要がありますし、一部修正を行う場合は公証人のチェックが必要です。

よって、公正証書遺言は改ざんされるリスクがありません。

デメリット

公正証書遺言のデメリットは以下のとおりです。

 

  • 費用がかかる

公正証書遺言は公証人に作成してもらうため、手数料がかかります。手数料は財産価額によって異なりますが、1,000万円までで17,000円です。手数料としてはそこまで高額なものではありませんが、自筆証書遺言の作成費用がかからない点と比べればデメリットといえるでしょう。

 

  • 手間がかかる

公正証書遺言は公証人と相談の上で遺言書の内容を決めていくため、公証役場へ足を運ぶ手間がかかります。また、公証人と証人の立ち合いのもと遺言書の確認の場を設けなければならないため、手間と時間がかかります。よって、時間が限られている方にとってはデメリットといえるでしょう。

 

  • 証人を探す必要がある

公正証書遺言を作成するためには、公証人のほかに、2人以上の証人に立ち会ってもらい、署名捺印をもらい必要があります。

証人は推定相続人や受遺者などは除かれますので、利害関係のない第三者を2人以上探さなければなりません。

見つからない場合は公証役場に依頼することも可能ですが、その場合は証人に謝礼を支払う必要があります。

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、内容自体を秘密にすることができる点に特徴がある遺言方式です。

 

メリット

秘密証書遺言のメリットは以下のとおりです。

 

  • 内容自体を秘密にすることができる

秘密証書遺言の最大のメリットは、内容自体を秘密にすることができるという点です。

 

  • パソコンでも書くことができる

秘密証書遺言は、手書きで書く必要はありません。パソコンで書くこともできますし、代筆も可能です。よって、病気などで自分で書くことが難しい場合にはメリットとなるでしょう。

 

  • 手数料があまりかからない

秘密証書遺言は、公証役場に遺言書を持参して公証人と2人の証人に立ち会ってもらう必要がありますので、手数料が11,000円かかります。しかし、公正証書遺言よりも手数料が安いため、財産価額が大きい場合は費用が削減できるといえるでしょう。

デメリット

秘密証書遺言のデメリットは以下のとおりです。

 

  • 遺言書が無効になるリスクがある

秘密証書遺言は、遺言の内容自体を秘密にすることができる一方で、その内容自体を公証人が確認することができないため、遺言書が要件に沿って記載されているかどうかを確かめることができません。

よって、遺言書が要件を満たさず無効になるリスクがあります。

 

  • 証人を探す必要がある

秘密証書遺言とするためには、公証役場に遺言書を持参し、公証人と2人の証人の立ち合いのもと、封紙に遺言をした本人と証人2人が署名捺印します。よって、公正証書遺言同様、証人を探す必要があります。

 

  • 見つけてもらえないリスクがある

自筆証書遺言は、誰にも見せなければ秘密にすることはできますが、遺言書を見つけてもらえないリスクがあります。

一方、秘密証書遺言は、内容自体を秘密にしつつ、遺言書を公証役場に持参するため、遺言書が見つからないというリスクを避けることができるようにも思えます。しかし、封をした遺言書自体は本人が保管することになるため、遺言書を紛失してしまったりするリスクは依然として存在するのです。

この点は公正証書遺言と異なる点です。

 

  • 家庭裁判所の検認が必要

秘密証書遺言は、公証人が内容を確認しているわけではないため、家庭裁判所の検認が必要です。

遺言書を書くメリット・デメリット

遺言書は必ず書かなければならないわけではありません。遺言書を書かない場合、法定相続分に従って遺産が相続されることになります。

ここでは、遺言書を書く場合のメリット・デメリットを解説します。

メリット

遺言書を作成するメリットは以下のとおりです。

 

  • 生前に遺言者の意思どおりに遺産を分配することができる

遺言書を作成することによって、遺言者が存命のうちに遺産の分配方法を決定することができます。例えば、配偶者は住む場所に困らないよう住居を相続させ、子どもは経済的に困らないよう預金を相続させるなど、遺言者の意思に沿った遺産分配が生前に実現できます。これが遺言書を作成する最大のメリットであるといえるでしょう。

 

  • 相続人以外にも財産を分配することができる

遺言書を作成しない場合、法定相続分に従って相続人に遺産が分配されますので、相続人以外に遺産が分配されることはありません。

一方、遺言書を作成すれば、相続人以外に遺産を分配することが可能になります。例えば相続人以外で大変お世話になった人に財産を譲りたい場合、遺言書においてその人に遺産を遺贈することで実現することができます。

 

  • 相続人間の争いを避けることができる

遺言書を作成しなかった場合、法定相続分に従って相続人に遺産が分配されますが、その後は遺産分割協議によって遺産の分割方法が協議されます。その際、相続人間で争いになるケースがあります。特に被相続人が多くの財産を有していた場合には相続人間で骨肉の争いになりやすいため、被相続人としてはそのような争いを避けたいと考えるでしょう。

遺言書で遺産の分配方法をあらかじめ定めておけば、遺言書どおりに遺産が分配されるため、遺産分割協議をする必要はなく、相続人間の争いを避けることができます。

デメリット

遺言書を作成するデメリットは以下のとおりです。

 

  • 無効になると逆に争いになる

遺言書は決まった形式に沿って書かなければ無効になってしまいます。特に自筆証書遺言の場合は無効になりやすく、作成日付や署名捺印がないと無効になります。

また、遺言書は意思能力があるうちに作成することが必要です。意思能力がない状態で作成した遺言は無効になります。意思能力がある状態で遺言書が作成されたか否かが争いになるケースがあり、遺言書があることで逆に争いになってしまう場合もあります。

 

  • 費用や手間がかかる

自筆証書遺言であれば費用はかかりませんが、公正証書遺言の場合、公証役場へ持参して公証人に作成してもらう必要があるため手数料がかかります。

また、公正証書遺言や秘密証書遺言の場合、証人を探す必要があり、手間がかかります。

まとめ

以上、遺言書の要件や記載内容、遺言書の種類やそれぞれのメリット・デメリットなどを解説しました。

遺言書は遺言者の意思を実現するために有効であり、将来の相続人間の争いを避けるためにも作成すべきでしょう。

一方で、遺言書は記載要件があり、要件に沿って記載しないと無効になってしまうリスクがあります。無効になってしまうリスクを回避するためにも、なるべき公正証書遺言で作成するか、自筆証書遺言で作成する場合であっても、弁護士や司法書士などの専門家に相談しながら作成することをおすすめします。

尾畠・山室法律事務所では遺言の作成に関するお問い合わせを受け付けております。まずはお気軽にお問い合わせ下さい。
遺言書の作成は将来の安心につながる重要な手続きですので、お早めにご検討されることをお勧めいたします。

相続のご相談は尾畠・山室法律事務所へ

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

山室 拓也のアバター 山室 拓也 弁護士

日々ご相談を頂く中で法律問題ではない相談に直面することもございます。司法書士、社労士、税理士、弁理士といった士業と連携するにとどまらず、探偵業、不動産業、製造業等を営む方とのネットワークを有することで、法律問題に限らず法律以外の解決策を提示させていただくなど、相談者様に寄り添った解決策を導き出します。

目次