「調停は不成立とします。この後は審判手続に移ります」。何度も家庭裁判所に通った末にこう告げられたとき、多くの方が「審判って裁判なの?」「自分の言い分は聞いてもらえるの?」と不安になります。遺産分割審判は、話し合いではなく、裁判官が証拠と法律に基づいて遺産の分け方を決める手続きです。調停とは進め方も、結論の決まり方も、準備すべきことも変わります。
この記事は、遺産分割調停の流れ・期間・費用の続きとして、調停が不成立になった後の審判を解説します。読み終えると次の5点が分かります。
- 審判と調停は何が違うのか
- 審判で決まることと、審判では決まらないこと
- 移行から確定までの流れと、かかる期間・費用
- 審判で不利になりやすいケースと、不服があるときの即時抗告
- 2023年改正で導入された10年ルールと、審判前の保全処分
審判は「最後の手段」ですが、準備の質で結果が大きく変わる手続きでもあります。福岡市天神の尾畑・山室法律事務所が、実務の視点で順に説明します。
遺産分割審判とは?調停との違い
遺産分割審判とは、相続人同士で遺産の分け方がまとまらないときに、家庭裁判所の裁判官が、提出された主張と証拠をもとに分割の方法を決める手続きです。調停が「調停委員を交えた話し合い」であるのに対し、審判は「裁判官による判断」です。当事者が納得していなくても、審判が確定すれば、その内容に従って遺産が分けられます。
調停が不成立になると自動的に審判へ移る
遺産分割調停が不成立になると、改めて申し立てなくても、その時点で審判の申立てがあったものとみなされ、審判手続に移行します(家事事件手続法272条4項)。調停で提出した書類や記録はそのまま引き継がれるので、一からやり直しではありません。
なお、調停を経ずに最初から審判を申し立てることもできますが、裁判所が職権で調停に付す(調停に回す)ことが多く、実務上は調停から始まるのが通常です。
調停と審判の違い

| 項目 | 調停 | 審判 |
|---|---|---|
| 主宰する人 | 調停委員2名と裁判官で構成する調停委員会 | 裁判官 |
| 進め方 | 当事者が交互に別室で話し、調停委員が調整する | 主張書面と証拠の提出が中心。必要に応じて審問 |
| 結論の決まり方 | 当事者全員の合意 | 裁判官の判断。合意は不要 |
| 柔軟性 | 法定相続分と違う分け方や代償金の分割払いも合意すれば可能 | 法律と証拠に基づく。分割払いなど柔軟な条件は認められにくい |
| 期日の雰囲気 | 相手と顔を合わせない | 審問では同席することがある |
| 終わり方 | 調停調書(確定審判と同じ効力) | 審判書。2週間以内に即時抗告がなければ確定 |
審判で「勝つ」とはどういうことか
審判で有利な結論を得るために必要なのは、感情に訴える主張ではなく、法定相続分と証拠です。「長男だから多くもらうべきだ」「親の面倒を見たのは自分だ」という主張も、それを裏付ける証拠(贈与の振込記録、介護の記録など)と法律上の根拠(特別受益、寄与分)に結びつけて初めて考慮されます。口頭で何度訴えても、書面と証拠がなければ審判には反映されません。この点が、調停委員が間に入って折り合いを探してくれる調停との最も大きな違いです。
審判で決められること・決められないこと

審判は万能ではありません。審判で判断できる範囲を知らないまま進めると、「審判が出たのに争いが終わらない」という事態になります。
審判で決められること
- 遺産をどう分けるか(誰がどの財産を取得するか、代償金をいくら払うか)
- 特別受益や寄与分を踏まえた各相続人の具体的な取り分
- 遺産の評価額(不動産や非上場株式の評価が対立しているとき)
預貯金も、2016年12月の最高裁大法廷決定以降は遺産分割の対象として審判で分けられます。
審判では確定しない「前提問題」
誰が相続人か、どの財産が遺産か、遺言書は有効かといった問題は「前提問題」と呼ばれます。審判の中で裁判官がこれらについて一応の判断をすることはありますが、その判断には確定力(既判力)がありません。争いが残れば、別途、地方裁判所での民事訴訟で確定させる必要があります。
- 相続人の範囲に争いがある場合:相続人の地位不存在確認訴訟など
- ある財産が遺産かどうかに争いがある場合:遺産確認の訴え
- 遺言の有効性に争いがある場合:遺言無効確認訴訟
前提問題に大きな争いがある場合、裁判所は審判を進めず、先に訴訟で決着をつけるよう促すのが通常です。相続人の範囲の基本は法定相続人の範囲や順位で解説しています。
使い込みは審判の対象外
被相続人の生前や死後に、特定の相続人が預金を引き出して使っていた場合、その返還を求める争いは遺産分割ではなく、不当利得返還請求や損害賠償請求として扱われます。審判で「使い込んだ分を差し引いて分けてほしい」と求めても、原則として審判の中では解決できません。
ただし2019年施行の民法改正で、相続開始後に処分された遺産については、処分した相続人以外の全員が同意すれば、その財産を遺産に含めて分割できるようになりました(民法906条の2)。死後の引き出しについては、この規定で審判の中に取り込める場合があります。使い込みの争い方は遺産相続で騙される?相続人に不利な不正な手続きで触れています。
寄与分は別に申立てが必要
介護や事業の手伝いで遺産の維持・増加に貢献した相続人が「寄与分」を主張するには、遺産分割の審判とは別に「寄与分を定める処分の審判」を申し立てる必要があります。裁判所は申立ての期限を定めることができ、期限を過ぎると寄与分は考慮されません。調停の段階で寄与分を口にしていても、審判で申立てをしていなければ判断の対象にならない点に注意してください。
審判の流れ:移行から確定までの6ステップ

STEP1 調停不成立の宣言と審判への移行
調停の最終期日で、調停委員会が「合意の見込みがない」と判断すると不成立が宣言され、同じ家庭裁判所で審判手続が始まります。調停での提出書類、遺産目録、評価資料は引き継がれます。担当する裁判官は調停を担当していた裁判官が引き続き務めることが多く、事件番号は審判事件のものが新たに付されます。
STEP2 審判期日の指定と、主張書面・証拠の提出
裁判所から審判期日の呼出状が届きます。期日に先立って、裁判官は争点ごとに「いつまでに何を提出するか」を指示します。ここで提出するのが主張書面(自分の主張を法律上の根拠とともに書いた書面)と証拠(預金の取引履歴、不動産の査定書、贈与の振込記録、介護の記録など)です。調停では口頭で済んでいたことも、審判では書面にしなければ判断材料になりません。
STEP3 争点整理
裁判官は、争点を次の順序で整理していきます。
- 相続人の範囲
- 遺産の範囲
- 遺産の評価
- 特別受益・寄与分
- 各相続人の具体的相続分
- 分割方法
この順序は、調停記事で説明した段階的進行モデルと同じです。調停で3まで整理できていれば、審判では4以降に集中できます。逆に、調停で遺産の範囲すら固まっていなかった場合は、審判でも時間がかかります。
STEP4 評価が対立したら鑑定
不動産や非上場株式の評価額で合意できない場合、裁判所が不動産鑑定士などの鑑定人を選任し、鑑定を行います。鑑定費用は当事者が予納し、通常は相続分に応じて分担します。1件あたり数十万円が目安で、鑑定結果が出るまで数か月かかります。鑑定を避けたい場合は、双方が納得できる査定書を早い段階で出し合い、評価額だけでも合意しておくのが得策です。
STEP5 審問と審判
主張と証拠が出そろうと、裁判官が当事者を直接呼んで事情を確認する「審問」が行われることがあります。審問では相手方と同席する場合もあります。その後、裁判官が審判を下し、審判書が各当事者に送達されます。審判書には、誰がどの財産を取得し、代償金をいくら払うかが具体的に書かれます。
STEP6 確定と、その後の手続き
審判書を受け取った日から2週間以内に即時抗告がなければ、審判は確定します。確定後は、審判書と確定証明書を使って、不動産の相続登記や預貯金の払戻しができます。相手方が代償金を払わないなど審判に従わない場合は、審判書を債務名義として強制執行ができます。
途中で調停に戻ることもある
審判手続の途中でも、裁判官が「話し合いで解決できそうだ」と判断すれば、事件を調停に付すことができます(付調停)。鑑定結果が出て評価額が固まった後や、争点が1つに絞られた後に、改めて合意に至る例は少なくありません。審判に移行したからといって、話し合いの道が完全に閉ざされるわけではありません。
審判期日の当日の流れと持ち物
審判期日は、裁判官と書記官が同席する審判廇や小さな室で行われ、所要時間は30分から1時間程度です。裁判官が提出済みの書面をもとに争点を確認し、次回までに出すべきものを指示する、という進め方が中心で、調停のように長時間話を聞いてもらえる場ではありません。
持ち物は、呼出状、身分証、これまでに提出した書面の控え、証拠の原本(裁判官から提示を求められることがある)、メモと筆記用具です。
発言は裁判官から求められたときに、聞かれたことに短く答えるのが基本です。伝えたいことがあれば、その場で話すのではなく、次回期日までに書面で提出します。
審判での分割方法の決まり方と、不利になりやすいケース
分割方法は4つ。審判では優先順位がある

遺産の分け方には4つの方法があります。
| 方法 | 内容 | 審判での位置づけ |
|---|---|---|
| 現物分割 | 不動産は長男、預金は次男、というように財産をそのまま分ける | 原則。最初に検討される |
| 代償分割 | 1人が不動産を取得し、他の相続人に代償金を払う | 現物分割が難しく、取得者に支払能力があるとき |
| 換価分割 | 不動産を売却して代金を分ける | 現物も代償も難しいとき。審判では競売になることがある |
| 共有分割 | 不動産を相続人の共有名義にする | 最後の手段。争いを先送りするだけなので避けられる |
審判では、現物分割→代償分割→換価分割→共有分割の順で検討されます。「実家は自分が住み続けたいので代償分割にしてほしい」と希望しても、代償金を払える資力を証明できなければ、換価分割(売却)が命じられることがあります。
代償分割の落とし穴
代償金は原則として一括払いです。「毎月5万円ずご10年で払う」といった分割払いは、調停で全員が合意すれば可能ですが、審判では認められにくいのが実務です。預金残高や融資の証明など、支払能力を示す資料を出せるかが分かれ目になります。
換価分割の落とし穴
審判で換価分割が命じられると、競売による売却になる場合があります。競売価格は市場価格を下回ることが多く、全員の取り分が減ります。売却せざるを得ない状況なら、審判前に任意売却で合意する方が手取りは多くなります。
審判で不利になりやすい5つのケース
- 特別受益の主張に証拠がない:「兄は家を建ててもらった」と言っても、贈与の時期・金額を示す振込記録や契約書がなければ認められない
- 寄与分の申立てをしていない:介護の事実があっても、申立てがなければ審判の対象にならない
- 不動産の評価資料を出していない:相手の査定書だけが証拠になると、その額を前提に判断される
- 感情論の書面:経緯や不満を長々と書いた書面は、読まれても判断に反映されない。法律上の要件に沿って書く必要がある
- 提出期限に遅れる:裁判所が定めた期限を過ぎた主張や証拠は考慮されないことがある
いずれも「調停のつもりで審判に臨んだ」ことが原因です。分け方の基本は遺産分割の分配方法と注意点、兄弟間で起きやすい争いは兄弟間の遺産相続における法的権利とトラブル回避で解説しています。
期間と費用

審判にかかる期間
最高裁判所の検証報告書によると、令和4年に終局した遺産分割事件(調停と審判を含む)の平均審理期間は12.9か月で、1年を超えた事件が35%を占めます。審判段階だけで見ても、争点が整理されていれば数か月、鑑定が入ったり前提問題で訴訟が必要になったりすると1年以上かかります。調停から通算すると2年を超える例も珍しくありません。
期間を左右するのは、争点の数、鑑定の有無、当事者が期限どおりに書面を出すかどうかの3つです。
段階別の期間の目安
審判段階の期間を工程ごとに分けると、調停不成立から第1回審判期日までが1〜2か月、争点整理の期日が月に1回のペースで2〜4回、鑑定を行う場合はその結果が出るまでに2〜4か月、審問を経て審判書が送達されるまでが1〜2か月、確定までが2週間というが目安です。鑑定がなければ半年前後、鑑定があれば1年前後と考えておくと、相続税や不動産の管理費の見通しを立てやすくなります。
相続税の申告期限との関係
相続税の申告期限は相続開始を知った日の翌日から10か月で、審判中でも延びません。分割が決まらないまま期限を迎える場合は、いったん法定相続分で申告・納税し、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておくと、後で配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用して更正の請求ができます。審判が3年を超えそうなときは、さらに「やむを得ない事由がある旨の承認申請」が必要です。詳しくは相続税申告期限を完全解説と国税庁タックスアンサー No.4208を参照してください。
実費
- 審判の申立手数料:調停から移行した場合は追加の収入印紙は不要。最初から審判を申し立てる場合は被相続人1人につき1,200円
- 郵便切手:裁判所の指示に従う
- 鑑定費用:不動産鑑定で数十万円が目安。当事者が予納し、相続分に応じて分担するのが通常
- 戸籍・登記事項証明書などの取得費:数千円〜
弁護士費用
当事務所の遺産分割に関する弁護士費用は、着手金が請求金額の8%(調停の場合は最低22万円)、成功報酬が得た経済的利益の10〜16%(最低11万円)です。審判に移行した場合の追加費用については、ご依頼時に見積もりをお示しします。弁護士費用は原則として各自負担で、相手方に請求することはできません。費用の負担や払えない場合の対処は遺産相続にかかる弁護士費用は誰が払う?で、福岡での弁護士の選び方は福岡市で相続に強い弁護士を探している方へで解説しています。料金表の全体は弁護士費用のご案内をご覧ください。
審判に不服があるとき:即時抗告
期限は告知から2週間

審判に納得できない場合は、即時抗告という不服申立てができます。期限は審判の告知を受けた日から2週間で(家事事件手続法86条)、この期間を過ぎると審判は確定し、覆せなくなります。審判書が届いたら、まず受け取った日を記録し、弁護士に相談するなら数日以内に動く必要があります。
提出先と書き方
抗告状の宛先は高等裁判所(福岡なら福岡高等裁判所)ですが、提出先は審判をした家庭裁判所です。抗告状に理由を書かなかった場合は、抗告の提起から14日以内に抗告理由書を提出します。理由書では、審判のどの判断が、どの証拠や法律に照らして誤っているかを具体的に指摘します。「納得できない」だけでは通りません。
高等裁判所での審理と結果
高等裁判所は、家庭裁判所の記録と抗告理由書をもとに審理します。新たな証拠の提出も可能ですが、原則として書面審理で、期日が開かれないこともあります。結果は、抗告棄却(原審判が維持される)、原審判の取消しと差戻し、または高裁自身が分割方法を決める変更のいずれかです。高裁の決定にさらに不服がある場合は最高裁への特別抗告・許可抗告がありますが、憲法違反や判例違反などに限られ、結論が変わることはまれです。
抗告すべきか、受け入れるべきか
即時抗告には注意点があります。抗告した側にとって、原審判より不利な判断が出ることもあり得ます。また抗告している間、遺産の分割は止まり、相続税の特例適用や不動産の処分も先送りになります。抗告すべきなのは、証拠の評価や法律の適用に明確な誤りがある場合です。「少し不満がある」程度なら、受け入れて早く分割を終える方が結果的に得になることも多く、見極めには弁護士の意見を聞くことを勧めます。
知っておくべき2つの制度:10年ルールと審判前の保全処分

10年ルール:相続開始から10年で特別受益・寄与分が主張できなくなる
2023年4月1日に施行された改正民法(民法904条の3)により、相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、原則として特別受益と寄与分を主張できなくなりました。10年を過ぎると、生前贈与や介護の貢献を考慮しない「法定相続分」で分けることになります。
例外は2つです。10年が経過する前に家庭裁判所へ遺産分割の請求(調停・審判の申立て)をしていた場合と、10年の期間満了前6か月以内にやむを得ない事由で請求できなかった相続人が、事由が消えてから6か月以内に請求した場合です。
この改正は施行前に発生した相続にも適用されますが、経過措置として、施行時にすでに10年を経過している相続や、施行から5年以内に10年を迎える相続については、施行から5年(2028年3月31日)までは従来どおり主張できます。親が亡くなってから長年放置している遺産がある場合、この期限は実務上の分かれ目になります。条文はe-Gov法令検索の民法、改正全体の概要は法務省の案内ページで確認できます。
審判との関係で言えば、10年を過ぎてから審判に至った場合、どれだけ介護の証拠をそろえても寄与分は認められません。長期間動いていない相続は、期限を確認したうえで早めに申立てをする必要があります。
審判前の保全処分:遺産が処分されそうなとき
審判が出るまでの間に、相手方が遺産の不動産を売却したり、預金を引き出したりするおそれがある場合、家庭裁判所に「審判前の保全処分」を申し立てることができます(家事事件手続法200条)。遺産の処分禁止、財産管理者の選任、仮差押えなどが認められると、審判が出るまで遺産を守ることができます。
保全処分を得るには、「審判で自分が取得する見込みがあること」と「処分されると回復が困難になること」を疎明する必要があります。すでに引き出しが始まっている形跡があるなら、審判の進行を待たず、早い段階で検討してください。
審判を有利に進める準備と弁護士の役割
審判は書面主義。「話せば分かってもらえる」は通用しない
調停では、調停委員が双方の話を聞いて落としどころを探してくれます。審判ではその役割を担う人がいません。裁判官は提出された主張書面と証拠だけを見て判断します。期日で感情を込めて訴えても、書面に書かれていなければ存在しないのと同じです。この違いを理解しないまま審判に進むと、調停で有利だった側が審判で不利になることさえあります。
準備する証拠

主張ごとに、次のような証拠が必要になります。
- 特別受益(生前贈与):振込記録、贈与契約書、不動産の登記事項証明書(贈与による所有権移転)、学費や結婚費用の支払記録
- 寄与分(介護・事業への貢献):介護日誌、医療機関や介護施設の領収書、ケアマネジャーの記録、事業への出資や無償労働を示す帳簿
- 遺産の評価:不動産業者の査定書(複数)、固定資産評価証明書、路線価図、非上場株式なら決算書
- 遺産の範囲:預金の取引履歴(金融機関で取得)、証券会社の残高報告書、保険証券
証拠は「相手が否定できない客観的な資料」が最も強く、本人の陳述書だけでは弱いと考えてください。調停の段階から証拠を集め始めておくと、審判に移行したときに慢てずに済みます。
弁護士なしで審判はできるか
法律上、本人だけで審判を進めることは可能です。しかし審判は、主張書面の構成と証拠の出し方が結果を直接左右する手続きです。どの事実が特別受益に当たるのか、寄与分として認められる「特別の寄与」とは何か、評価額の争い方をどうするかは、法律の知識がなければ適切に書面化できません。調停以上に、弁護士の有無で結果の差が出やすいのが審判です。弁護士に依頼した場合の具体的なメリットは相続トラブルを弁護士に依頼するメリットとは?で解説しています。
調停不成立の時点で依頼する人が多い理由
実際には、調停までは本人で進め、不成立になった時点で弁護士に依頼する方が多くいます。審判への移行は「ここから先は証拠と法律の勝負になる」という区切りだからです。この段階で依頼すれば、調停で出した資料を整理し直し、足りない証拠を集め、審判の争点整理に合わせた書面を出すところから始められます。実際の争いの例は相続争いの実例7選にまとめています。
福岡で審判を受ける方へ
福岡市にお住まいの方の遺産分割審判は、調停と同じく福岡家庭裁判所本庁(福岡市中央区六本松4-2-4、地下鉄七隈線六本松駅から徒歩約3分)で行われます。本庁の管轄は福岡市、筑紫野市、春日市、大野城市、太宰府市、古賀市、糸島市、宗像市、福津市、糟屋郡、那珂川市です。県内のその他の地域は各支部が担当するので、福岡家庭裁判所の案内で確認してください。
即時抗告の宛先となるのは福岡高等裁判所です。相手方が県外に住んでいる場合でも、審判は調停を行った家庭裁判所で続きます。電話会議やウェブ会議で期日に参加できる場合もあるので、遠方の方は事前に裁判所に相談してください。
当事務所は天神にあり、福岡家庭裁判所まで近い立地です。管轄や期日の詳細は遺産分割調停の記事でも説明しています。
よくある質問
審判の期日に出席しないとどうなりますか?
審判は調停と違い、欠席しても手続きは進み、出席した側の主張と証拠だけで判断されます。書面を一切出さなければ、法定相続分どおりか、相手の主張に沿った審判が出る可能性が高くなります。出席できない事情があるなら、書面の提出と期日変更の申請を必ず行ってください。
審判でも相手と顔を合わせますか?
審問が開かれる場合、同じ部屋で相手方と同席することがあります。ただし裁判官の判断で別々に審問することもあります。相手との同席に強い不安がある場合は、事前に裁判所へ申し出てください。
審判の途中で話し合いによる解決はできますか?
できます。裁判官が調停に付す(付調停)こともありますし、当事者全員が合意に至れば、審判の途中でも調停成立の形で終わらせることができます。鑑定で評価額が確定した後に合意に至る例は少なくありません。
審判が出た後に、相続人全員で違う分け方に合意できますか?
審判が確定した後でも、相続人全員が合意すれば、審判と異なる内容で遺産を分けることは可能とされています。ただし、すでに審判に基づいて登記や払戻しがされていると手続きが複雑になり、税務上の扱いにも注意が必要です。確定前に合意できるなら、その方が確実です。
審判にかかる期間を短くする方法はありますか?
争点を絞ること、評価額について早めに合意すること、裁判所の期限を守って書面を出すことの3つです。特に不動産の評価で鑑定を避けられれば、数か月は短縮できます。
遺言書が後から見つかったらどうなりますか?
有効な遺言書が見つかった場合、遺言の内容が優先されるため、審判の前提が変わります。遺言で分割方法が指定されていれば、その財産については遺産分割の対象から外れます。遺言の有効性に争いがあれば、審判とは別に遺言無効確認訴訟で決着をつける必要があります。遺留分との関係は遺留分侵害額請求とはを参照してください。
審判で決まった代償金を相手が払ってくれないときは?
確定した審判書は債務名義になるので、相手の預金や給与、不動産に対して強制執行ができます。支払いが見込めない相手には、審判の段階で換価分割を求める方が確実な場合もあります。
審判と訴訟は何が違うのですか?
審判は家庭裁判所が家事事件手続法に基づいて非公開で行う手続きで、訴訟は地方裁判所が民事訴訟法に基づいて公開の法廷で行う手続きです。遺産の分け方そのものは訴訟では決められず、必ず家庭裁判所の調停・審判で扱われます。逆に、相続人の範囲や遺言の有効性、使い込みの返還は訴訟で争います。どちらの手続きになるかで、申し立てる裁判所も準備する書面も変わるため、争いの性質を最初に見極めることが大切です。
まとめ:審判は「証拠と法律」で決まる
遺産分割審判は、調停が不成立になった後に裁判官が分け方を決める手続きです。調停のような話し合いではなく、主張書面と証拠で判断されるため、準備の質が結果を左右します。審判で決められるのは分割方法と具体的相続分で、相続人の範囲や遺言の有効性、使い込みは別の手続きで争う必要があります。審判書を受け取ってから2週間以内なら即時抗告ができますが、抗告すべきかどうかは慎重な判断が必要です。
2023年改正で導入された10年ルールにより、長く放置した相続では特別受益や寄与分を主張できなくなります。心当たりがある方は、期限を確認したうえで早めに動いてください。
調停の段階からの流れは遺産分割調停の流れ・期間・費用、遺産分割協議の基本は相続財産の遺産分割協議とはで解説しています。
調停が不成立になった、あるいは不成立になりそうな方は、お問い合わせからご相談ください。調停での資料を拝見し、審判に向けて何を補うべきかを具体的にお伝えします。

